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今多くの企業が注目している、従業員の本音を測ることのできる指標「eNPS」とは何かご存知でしょうか?
従来メジャーであったES(従業員満足度)よりも、eNPSはより細かく、正確に従業員の状態を測定できるため、多くの企業が導入しています。
離職率、採用など、人事上の課題に頭を悩ませていらっしゃるなら、もしかしたらこのeNPSに解決の糸口があるかもしれません。
このeNPSが高ければ高いほど離職率は低くなり、企業の生産性は高くなると言われています。
「そもそもeNPSとは何なのか?」
「eNPSとはどのように測定すればいいのか?」
など、eNPSを導入するにおいて基本的な内容はこの記事だけでマスターできます!
ぜひ虎の巻としてご活用いただけたらと思います。
eNPSとは
eNPSとは「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略称です。
(employee=従業員、Net=正味・引き算、Promoter=推奨者・おすすめする人、Score=点数・指標)
「親しい知人や友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」を尋ね、「職場の推奨度」を数値化したものです。
このeNPSとは、もともとアップル社が顧客向けに実施していたNPS調査を、社員のエンゲージメントを可視化するために用いるようになったのが始まりだと言われています。
(NPS調査とは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略。顧客が商品やブランドに対して感じている愛着度を表すための指標。)
ES(従業員満足度との違い)
eNPSとよく混同されがちなのが、ES(従業員満足度)です。これらの違いとは、一旦何なのでしょうか。
①より正確に職場環境を測定できる
ESと比較して、eNPS調査の方がより正確に職場への満足度を把握できると言われています。ES調査では、「あなたは今の職場にどれくらい満足していますか」という質問であるのに対して、eNPS調査では、「あなたは現在の職場をあなたの親しい人にどれくらい勧めたいと思いますか」という質問になります。
そのため、高得点をつける心理的ハードルがよりもeNPSの方が高くなるのです。結果、従業員が職場に対して感じていることを正確に測定できることに繋がります。
このように、ESと比較してeNPS調査ではより正確に職場環境を測定することが可能です。
②セグメントごとに正確なアクションを取れる
eNPS調査では、回答に応じて従業員を「推奨者」「中立者」「批判者」の3つにセグメント分けします。
これら3つのセグメントの特徴はそれぞれ全く異なるため、それに応じた対策を練る必要があります。
例えば、推奨者に関してはその傾向を定量的に分析して特徴を明らかにし、「中立者」「批判者」とのギャップを特定してそれぞれ施策を打っていくということが考えられます。
調査を実施した後、セグメントごとに正確なアクションをスピーディーに行うことができるのがこのeNPSの特徴と言えます。
③最低2問から調査することができる
ES(従業員満足度)は、様々な側面から従業員の状態を測定する方式であるため、総じて設問数が多くなることは避けられません。
一方、eNPSは「あなたは現在の職場をあなたの親しい人にどれくらい勧めたいと思いますか」というメインの質問と、理由を問う自由記述形式の質問2つから調査することが可能です。
聞くべきことが明確であるため調査準備にも手間がかかりませんし、その後の分析もコストが低いです。また、質問数が少ないため従業員の協力を得やすいというのもこのeNPSが非常に長けている点です。
eNPSを可視化するメリットと効果とは
eNPSを活用することで、
- 離職率の改善
- 採用の成功に直結(リファラル採用への活用)
- 顧客満足度アップ、業績改善
- 生産性の向上
- エンゲージメントとの関連
といった効果を見込むことができます。
以下でそれぞれ詳しく解説させていただきます。
①離職率の改善
eNPSのスコアと離職率には相関関係があることがわかっています。eNPS調査を行うことで、離職する可能性が高い人を予測し、対策を講じることが可能になります。
特に、仕事で高い成果を上げるハイパフォーマーの社員が「批判者」に属していた場合、その人物に対して注意を払うことでハイパフォーマーの流出を防ぐことができるでしょう。
②採用の成功に直結(リファラル採用への活用)
eNPS調査の質問は、「あなたは現在の職場をあなたの親しい人にどれくらい勧めたいと思いますか」というものでした。この質問に高いスコアで回答した人物は、当然会社のことを周囲に勧めてくれる可能性は高いです。
つまり、eNPSが高い従業員は積極的にリファラル採用に取り組んでくれる可能性があるということです。リファラル採用とは、従業員に友人や知人を紹介してもらう採用手法のことで、コストカットと自社にあった人材を採用しやすいというメリットがあります。
※リファラル採用についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、ご興味があればぜひご覧ください!
eNPS調査を実施し、そのスコアを高めることができれば、リファラル採用に積極的な従業員が増えるため、採用コストを削減して自社に適した人材を採用することができるでしょう。
③顧客満足度アップ/業績改善
eNPSの回答スコアが高い従業員は、顧客に対してもより良いサービスを提供したいという気持ちが強い傾向があります。顧客に対して強くコミットし、顧客満足度の向上につながりやすくなります。
そうした社員が増えれば、当然ながらより多くの顧客の満足度も高まり、業績も好転していくでしょう。
調査を実施し、「推奨者」を増やす施策を打つことで顧客満足度アップ、および業績改善にも寄与できるのです。
④生産性の向上
eNPSのスコアが高い従業員は、企業のことを前向きに自分事として捉え、自分と企業の両方が成長できるように考える傾向があります。そうした社員は当然仕事においても成果を出そうとしますし、会社全体が成果を出すためにはどうしたらよいのかを考え続けてくれます。
そうした社員が増えれば、企業全体、もしくはチームごとの生産性が高まることに繋がっていきます。
⑤エンゲージメントスコアとの関係
eNPSとエンゲージメントスコアには正の相関があるとされています。つまり、eNPSが高い社員はエンゲージメントスコアも高い傾向にあるということです。
以前のこちらの記事でエンゲージメントスコアに関して詳しくご紹介していますが、スコアを高められていないという方は一度eNPSの測定とその改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
逆に、eNPSを測定して施策を打ってみたけれどもうまくいかないという場合には、エンゲージメントスコアの測定と改善に取り組んでみるのもおすすめです。
エンゲージメント改善施策に関する記事も出していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
eNPSの計算方法とは
ここでは、実際にeNPSを測定、計算していく方法について紹介します。
質問としてはこれまでも出てきましたが、「あなたは現在の職場をあなたの親しい人にどれくらい勧めたいと思いますか」という、職場の推奨度を問う質問です。
この質問への回答を0~10の11段階で質問します。
回答として、
- 9~10点を「推奨者」
- 7~8点を「中立者」
- 0~6点を「批判者」
と分類します。
そして最後に、「全体に対する推奨者の割合」から「全体に対する批判者の割合」を引きます。
そして出てきた値がeNPSです。
職場への満足度を直接問うのではなく、職場を親しい人に勧めたいかどうかを質問するため、高い点数もしくは低い点数をつける際により慎重に考えるようになります。
そのため、より正確に職場の状態を測ることができるのです。
eNPSに影響を及ぼす要因とは
eNPSとはどういった要因から影響を受け、高くなったり低くなったりするのでしょうか。
これを理解しておくことで、より有効な施策を打てるようになるため、しっかりと理解しておきましょう。
ここでのポイントは以下の3つです。
- 正当な報酬
- 顧客への貢献感
- 長時間労働はほとんど影響しない!
以下でそれぞれ解説していきます。
①正当な報酬
報酬とは、自身の職場への働きに対する正当な評価として従業員は捉えています。
そのため、その報酬が自身の働きに対して正当であるかどうかは、職場への評価に直結してあらわれます。
今の報酬体系が適切かどうか、今一度確認してみましょう。
②顧客への貢献感
普段の仕事の中で、「顧客に貢献できている」と実感できている従業員のeNPSは高く、逆に「顧客のために仕事ができていない」と感じている従業員のeNPSは低いという傾向があります。
顧客への貢献感は仕事のやりがいを高め、そこから得られる幸福感を高めます。それによって自社への愛着度も感じやすくなっていると考えられます。
③長時間労働はほとんど影響しない!
eNPSのスコアが低いとき、
「労働時間が長いことに不満を感じているのかな…」
と考えるのは非常に自然だと思います。
しかし、実は調査を見てみると、最もeNPSのスコアが高かった労働時間は5~9時間と9~12時間、次が15時間以上と5時間未満、もっともeNPSのスコアが低かったのは13~15時間でした。
当然、前提として過剰な労働時間の長さは推奨されるものではありません。しかし、労働時間が短いことがeNPSのスコアの高さに繋がっているわけでもないことに注意が必要です。
「労働時間以外のポイントに問題はないか?」
と思考を巡らせてみましょう。
eNPSを活用し、組織を改善する手順とは
eNPSを活用して組織をより良くしていくためには、前準備からしっかりと手順を踏んでいくことが必要です。
ここではその流れの一例をご紹介しますので、ぜひお手元においてプロジェクトを立ち上げ、進めてみてください!
- プロジェクト立ち上げ
- eNPS調査の準備
- eNPS調査の実施
- 分析、課題把握
- 施策策定
- 全社へのフィードバック
- 施策実行
以上の流れで進めていきます。
①プロジェクト立ち上げ
準備、調査、施策実行までを行っていくプロジェクトチームを結成しましょう。主に人事部が中心となっていくかとは思いますが、現場を巻き込めるメンバーを入れておくと非常にスムーズにプロジェクトを進めることができます。
タスクとしては、企画、スケジュール管理、全社に向けた発信、情報共有、データ収集&分析、外注検討など多岐にわたります。
②eNPS調査の準備
プロジェクトチームが立ち上がったら、eNPS調査を実施するための準備に入っていきます。
この段階で行わなければならない準備は、
- eNPS調査項目の作成
- eNPS調査実施スケジュールの設定
- eNPS調査の実施方法の策定
の3点です。
(1)eNPS調査項目の作成
基本的な質問である「あなたは現在の職場をあなたの親しい人にどれくらい勧めたいと思いますか」という質問とその理由だけでもeNPS調査は成立します。
しかし、それだけでは従業員がなぜそのスコアを付けたのかを予測することができません。
そこで、調査の際には同時に他の質問もすることがおすすめです。
例えば、
- 報酬や評価:「正当な報酬をもらっていると感じていますか?」
- やりがいや幸福度「仕事の中で顧客への貢献を実感できていますか?」
- 会社の将来性:「会社の安定に関して不安はありませんか?」
- ビジョン共感:「○○という会社のビジョンに共感して働けていますか?」
といった質問が考えられます。
これらの質問を同時に投げかけることで、eNPS調査の結果スコアが低かったとしても仮説が立てやすくなるため、課題の特定から施策の実行まで移しやすくなります。
(2)eNPS調査実施スケジュールの設定
「いつから調査を開始し、いつまでに回収するのか?」というスケジュールを大まかにでも定めておきましょう。
そうすることでリマインド忘れや形骸化を防ぎ、確実にプロジェクトを完遂することに繋がります。
(3)eNPS調査の実施方法の策定
- アンケートの作成から回収まで自分たちで実行するのか
- アンケートの作成、回収は代行企業に依頼するのか
- eNPS調査ツールを利用するのか
など、具体的な実施方法も考えておきましょう。
社内で自分たちで実行することも難しくはないと思いますが、その場合調査後の分析でつまづくことが多いです。
代行企業に依頼しないまでも、調査ツールは利用することをお勧めします。
③eNPS調査の実施
準備が完了したら、いよいよ実行に移しましょう。
全社に共有し、スケジュール通りに回答を回収します。
その際に、実施する目的もあわせて共有しておくと、協力を得やすくなります。
計算方法は前の章で紹介していますので、参照してください。
④分析、課題把握
回答が集まったら、集計して分析を行います。
自社のeNPS値が同業界の平均と比較してどのくらいなのかを大雑把に把握するところから始めましょう。同等、もしくはそれよりも高ければ大きな問題はないかもしれませんが、平均よりも著しく低い場合はより詳細な調査と分析を行う必要がある可能性があります。
その後、設定した質問項目ごとに分析を進めていくと、自社の抱える課題がどのポイントにあるのか見えてくるはずです。
⑤施策策定
分析結果を基に、自社の強みと課題を特定し、施策の策定を行います。
具体的に定めるべきこととしては、
- 改善ポイント
- 改善方針
- 施策内容
- アクションプラン
- 達成指標(Key Results)
などが挙げられます。
施策を自分たちで行うのが難しい際は、調査ツールのレコメンド機能を活用したり、コンサルティングファームの出している資料を参考にしたりして情報を集めましょう。
弊社でも組織改善に役立つ資料をいくつも公開しています。
右上の「お役立ち資料」からダウンロードしてみてください。
⑥全社へのフィードバック
意外と忘れがちですが、非常に重要なのがこの「全社へのフィードバック」です。
従業員は調査に協力する際、なにかしらの改善を期待して回答するため、調査後に経営者や組織本部が改善に向けた行動をしなかったら従業員のeNPSはさらに下がります。
調査の結果どうだったのか、結果を受けてどういうアクションを取っていくのかを全社に向けてフィードバックしましょう。それによって組織への期待感が高まり、それ自体がeNPSの向上につながる可能性すらあります。
⑦施策の実行
ここまで実施できたら、あとは策定した施策を愚直に実行していくのみです。
常にPDCAを回しながら、成果に繋がるように継続してウォッチし続けましょう。
eNPS調査を導入するときの注意点とは
eNPS調査を導入するとき、必ず念頭に置いておいていただきたい注意点があります。
それは、
「日本企業でeNPS調査を行う場合、一般的に米国企業と比べるとスコアが低い値になる」
ということです。
ここで米国企業と比較してeNPSの値が低いことは問題ではありません。
日本社会特有の効果が働き、一般的に見られる特徴なのです。
日本企業のeNPSが低い理由とは?
- 全体として従業員エンゲージメントが低い傾向がある
- 「中心化傾向」が働いている
という2つの理由があると考えられています。
(1)全体として従業員エンゲージメントが低い傾向がある
現在は好転しつつあるとは言われているものの、日本社会特有の終身雇用制度などの影響から、従業員エンゲージメントは先進国の中で最低クラスとされています。
ギャラップ社が2017年に公表したデータでも、「熱意ある社員の割合」が139カ国中132位と世界的に見ても低水準です。
以前にも述べたように、エンゲージメント・スコアとeNPSの値には正の相関があるため、上記のような特徴がある日本企業においては他国に比べてeNPSが低い値となりやすいのです。
(2)「中心化傾向」が働いている
中心化傾向とは、アンケートに回答する際、「大変満足」や「大変不満」といった端の選択肢を選ばず、「どちらでもない」「満足でも不満でもない」といった項目を選択する率が高いことを指します。
日本人にアンケートを取ると、この中心化傾向が働いている結果が表れやすいと言われています。
eNPS調査でも同様にこの中心化傾向が働いた結果、「批判者」と判定される割合が高くなる傾向にあるのです。
これらは日本社会全体に見られる特徴であるため、気に掛ける必要はありません。
それよりも、「今のスコアをどれだけ高められるか?」という絶対評価的な思考で施策を考えていくと良いでしょう。
eNPSを高める効果的な施策とは?
「プロジェクトを進めてはみたものの、どんな施策が効果的なのかわからない…」
というのは皆さんぶつかる疑問なのではないかと思います。
ここではいくつか考えられる基本的な施策例をご紹介しますので、一例として参考にしていただければ幸いです!
①評価制度を見直す
「正当な報酬を得られているか」というのは、eNPSを決める重要な要因の一つです。
そのため、このポイントを見直すことは非常に有効と言えます。
正当な報酬を従業員に与えるためには、公平公正な評価方法で、その基準を明確にすることが必要です。
例えば昇格の基準などの等級基準書などを明文化して作成して共有する、といった施策が考えられます。
②金銭以外の報酬で報いる
報酬というのは、金銭的な報酬に限った話ではありません。
貰えるお金が少ないからeNPSが低いのではなく、「良い働きをしても評価されないから」eNPSが低くなるのです。
であれば、もちろん金銭面で報いることは大前提必要として、それ以外でも報酬を与えることは非常に有効だと考えられます。
この場合の報酬というのは、感謝の言葉から得られる満足感など、精神的な報酬が代表例です。
サンクスカード制度など、社内で「ありがとう」を伝えあえる仕組みなどの取り組みがあります。
③従業員間でのコミュニケーションを改善する
上長からの過度な叱責、トップダウンのマネジメントスタイル、雰囲気の重さなどは従業員のモチベーションを奪い、eNPSスコア低下の原因にもなっています。
この点に問題がある場合は、マネジメント層にアプローチして風通しを改善するなど、職場内のコミュニケーションにテコを入れるのが効果的でしょう。
eNPSとは、従業員の本音を測れる便利な指標!活用して組織をより良くしましょう!
いかがでしたか?
eNPSは、組織の状態を正確に把握できるとても便利な指標です。
組織をより良くしたいと考えている方は是非一度導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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