先日、社会保険労務士法人クラシコ様との共催ウェビナーを開催いたしました。

テーマは、『自社の売上アップ・採用力向上に繋がる!中小企業を成長させるM&A活用法とは?』。

中小企業におけるM&Aの活用法について、白潟総研グループM&Aイノベーション株式会社代表取締役社長の畦田から、また、M&Aに欠かせない労務デューデリジェンスについて、社会保険労務士法人クラシコの近藤様からお話いただきました。

目次

1. M&Aの動向について

まずは、M&Aの現状についてお話します。結論、M&Aは今ものすごく世の中的に活性化している状況です!

直近のデータでお話しすると、ここ数年は毎年3500件以上、2021年では4300件ほど年間でM&Aが行われています。

M&Aはやはり、多額の投資が必要になるため景気に左右されます。リーマンショックで一時件数が下がりましたが、その後は上昇していますね。また、コロナの影響で再度一時件数が落ちているものの、3500件を超えています。

ただ、ここには4000件という数字が出ていますが、実態は1~2万件ともいわれています。

データとして出ている「4000件」という数字は、資本提携やM&Aを行なった企業が何かしらの形でPRを出している場合のみ数えられているのです。

中小企業同士もしくは零細企業同士の資本提携やM&AはなかなかこういったPRにはなりにくいので、実際に表面では見えていない裏側ではさらに多くのM&Aが行われていて、それが1~2万件に上っているのではないかと言われています。

このように、M&Aの時代を迎えている主な背景は、以下の3つです。

①後継者不足による親族外承継の増加
親族に後継者がいない会社では、従業員または第三者が後継者となりますが、年々従業員または第三者の後継(親族外承継)の比率が上がってきています。

②経営者の高齢化
日本全体でも少子高齢化が起こっていて思うように代替わりできていないのも原因です。20年間で経営者の年齢の山は47歳から69歳へ移動しています。

③企業数が多すぎるが故の統廃合
相対的に見て、日本は中小・零細企業が非常に多い国です。多すぎるからこそ、生産性が下がってしまっているとも言われています。今後10年で80万社ほど減ると予測されていて、不況により廃業するくらいなら会社を売って統合を進めていく、というケースも非常に多く見られます。

2.買い手のメリットとリスク

M&Aの買い手が企業もしくは事業を買うことで予想されるメリットは、売上の上昇が見込めること、コストダウンができることが大きいと思います。

事業・企業を買収すると、売り手の事業の取引先とのつながりが生まれ、売上に繋がります。また、売り手の事業で今まで資金不足が原因できなかったDX化等に投資してテコ入れをすれば、コストダウンも見込めますし、利益の向上にもつながります。

また、人材の確保という観点もありますね。
人手不足の現代、人材の確保のためにM&Aを行うケースがあります。私のお客様でもそのようなケースがあるのですが、特に、専門職を抱える企業にM&Aによる人材確保のニーズを感じます。

例えば、ITエンジニアはなかなか採用できないと言われています。そこで、採用が難しいのであれば、エンジニアが属している会社を買えば人材の確保ができるだろうという考え方です。経験者の採用がM&Aによって実現できるのです。

ここまでお伝えしたように、メリットも多いM&Aですが、もちろんリスクもあります。リスクとなるのは主に以下です(下図)。

同業を買うのであれば、買った後のイメージがしやすいと思います。

例えば、エリア展開をしていくために、自分たちが営業していないエリアの会社を買ったらシンプルに売上と利益が上がりますよね。

ただ、新規事業の一環で買った場合は、上記の図の3番のように「思ってたのと違った」ということが起こる場合があり、結果的に1番の「当初考えていたシナジー効果が得られない」が起こることがあります。

2番目もよくあるリスクです。会社が買われて子会社になってしまった方の社員は、自分たちの会社は将来どうなってしまうのか、クビを切られてしまうのではないか、という不安を持つことがあります。その不安を払拭できないと、どうしても退職に繋がってしまいます。

せっかく人材確保のためにM&Aに成功しても、人が辞めてしまうと全く意味がなくなってしまいますよね。離職を防ぐには、しっかり不安払拭をしていくことが大切です。

「リスクを許容する」ということも大切ですが、「リスクを防止する」という施策も非常に重要です。
M&Aのプロセスの中で、ビジネスデューデリジェンスや労務デューデリジェンスを通してよく知った上で、一緒になったあとの計画を練っていく必要があります。未然にリスクとどう向き合うかが大切になってきます。

3.仲介会社に頼らない「独自アプローチ」の方法

実際に案件を探すには、いろんなアプローチ方法があると思います。

M&Aにおいては、仲介会社や金融機関を通してターゲット企業にアプローチする方法や、ターゲット企業の知り合いに紹介してもらう方法、自分たちで直接アプローチする方法があります。

ただ、M&Aの仲介会社は仲介手数料がとにかく高いです。一般的に仲介会社は以下のような報酬パターンを持っています。

着手金の相場は100万円~200万円程度ですが、これは最初に支払うものなので、M&Aの成立・不成立にかかわらず、返金はありません。中間金も同様に返ってこないお金です。これだけでも中小企業にとっては結構な金額になりますよね。

また、一般的に報酬算定に用いられているレーマン方式の報酬金額にも実はからくりがあります。
たとえば、1億円の報酬基準金額だとすると、この図では5億円以下の部分に当てはまるので、5%の料率をかけて500万円のように見えます。
しかし、大手の仲介会社では「最低報酬基準額」というのを定めていて、それが2000万、3000万なんていうケースもあります。既に着手金や中間金を支払ったうえで、1億円の報酬基準額のうち2000万、3000万も報酬金額として払うのは、買い手としては割に合わないというのが現実です。

また、報酬基準額の決め方にも種類があり、一番金額が高くなってしまうケースでは、株式の売買価格に加えてすべての負債を加算した額を基準に決めるものがあります。

仲介会社さんにお願いする場合は、「何で報酬基準額が決まっているのか」「最低報酬金額はいくらなのか」「料率は何%なのか」をしっかりと確認していただけるといいかなと思います。

しかし、M&Aで中小ベンチャー企業が勝てる唯一の方法は、「独自アプローチをすること」です!
仲介会社になるべく頼らない、もしくは紹介してもらうのが一番いいと思っています。

M&Aがうまくいってらっしゃる会社は結構独自アプローチをされています。

アプローチ先も、「顕在層」ではなく「潜在層」にすることがポイントです。自ら「会社を売ります」と出している顕在層って、「ワケアリ」なことが多いので、なかなかいい案件に巡り合えないのが現実です。

いい案件、すなわち潜在層にアプローチしていくには、やっぱり独自アプローチが欠かせません。
M&Aに成功している会社は、「自分たちがこの会社とやればシナジーが見込める!」となれば直接提案書を送り、「御社と一緒ならこんなことができますよ!こんなメリットありますよ!」と、ある意味営業活動の一環でM&Aを行っているんですね。

ここで、独自アプローチのポイントをご紹介したいと思います。

それは、「M&Aから入らない」ことです。

業務提携や一部の資本提携も含めて、可能性を広げてアプローチをしていくことで「今すぐ売りたい!」という顕在層ではなく、「将来的にはM&Aもありえる」という潜在層へのアプローチが可能になります。

まずは業務提携・資本提携で一緒に仕事をしていくことで、よかったらM&Aで一緒になるという手法です。

また、1対1の相対(あいたい)取引をすることで、M&Aを進めやすくなります。
売り手1社が複数の買い手に対してオークション形式で売ることもよくあるケースなのですが、そうなると金額勝負になってしまいます。中小ベンチャー企業にとって大きな金額を提示するのはなかなか難しいので、結果的に大手に取られてしまうんですね。1対1で自らM&A、資本提携の交渉を進めることができれば、仲介手数料もかかりません。

このように、いきなりM&Aではなく、業務・資本提携からアプローチをすれば、潜在層の優良企業にアプローチをできますし、いきなりM&Aをする場合に比べ、業務提携の中で相性を確かめたうえでM&Aにステージアップできるので、リスクを低減することができます。

M&Aはよく結婚にたとえられますが、いきなりお見合いではなく、恋愛、同棲をしてみて、よかったら結婚する、よくなかったら別れる、そんな感覚ですね。

4. ソーシング代行の活用

では、独自アプローチは自社ですべてやるべきなのでしょうか?

社長自らが時間をかけることが可能な場合や、経営企画部など専門部隊を作れる場合、自社でやっていただくのが一番良いと思います。

ただ、なかなか自社だけでやりきるのがチャレンジというところもあるかと思います。白潟総研グループ、M&Aイノベーションで良いサービスがあるのでご紹介させてください!

M&Aイノベーションでは、M&A業界で「ソーシング」と呼ばれる、案件発掘のお手伝いをするサービスを行っています。

皆さんの会社の「こんな会社と組みたい、M&Aをしたい」というターゲット企業に対して、私たちがアポイントを打診します。その中で業務提携や資本提携に前向きな企業をマッチングさせていただいて、その後は2社間で交渉をすすめていってもらうというサービスです。

最低でも半年に1件以上、業務資本提携の交渉ができる企業をご紹介しておりまして、着手金のみの中間金・成約手数料なしで自社のニーズで自由にアプローチできます!

ITや運送業、造園業などさまざまな業界の支援実績がありますので、ぜひご興味ある方は以下からお問い合わせください!

↓ここからは、第2部社会保険労務士法人クラシコの近藤様によるセミナーです!

5. 労務DDの必要性

大企業では労務デューデリジェンス(労務DD)を行うのは一般的ですが、中小企業のM&Aは労務DDをした企業は非常に少ないです。

しかし、労務DDをしないまま買収を行ってしまうと、知らないうちに簿外債務などのリスクを負うことになってしまう可能性があります。

ではなぜ労務DDが進んでいないのでしょうか?それは、そもそも労務DDのことを知らない経営者が多くいるというところです。

仲介会社に依頼している場合、仲介会社としては成約報酬金を得るためにできる限り「成約をしたい」ので、「リスクを洗い出されたくない」ケースも多いことでしょう。

労務関係で確認しておくべき項目としては、労務関係の法的リスク、簿外債務、労働環境・雇用関係が挙げられます。ただ、労働環境・雇用関係については、DDを行なってもわかることは少ないため、M&Aの前段階の業務提携・資本提携で実際に一緒にやっていくことで、会社の状態や離職の状態を確認していただくのが確実です。

私どもが事前にできることの中でも特に、簿外債務のチェックは必須です。

売り手先に未払い賃金や社会保険の未加入がある場合は、遡って支払わなければなりません。すべて合わせると大きな金額になるので、事前の簿外債務の有無のチェックは必ず行うべきだと思います。

今後の社会情勢をみても、社会保険料の未払いや未払い賃金、労働問題は今後ますます注目を浴びていくと予想されます。

6. 労務DDを実際に行う場合

実際に労務DDを行う場合は、以下のステップで行います。(下図)

報告書作成は、通常3か月ほどとお伝えをしていますが、M&Aの実施状況によっては期間をご調整させていただいています!

7.セミナー資料を無料配布中!

こちらのセミナーで使用した資料を、期間限定で無料配布中です!
※競合の方からの資料申し込みはご遠慮しております。

白潟総研では、採用・組織づくり・M&Aをテーマに様々なセミナーを随時開催しています!
主に採用力をテーマとした単独セミナーを始め、法律事務所や広報PR、Webマーケなど、あらゆる業界のご企業様とコラボした共催セミナーも。ご興味ありましたら、ぜひ一度のぞいてみてください!

※最新のセミナー情報をメルマガ配信しています。
ご希望の方はお問い合わせに「セミナー情報のメルマガ配信を希望する」とご記載のうえ、ご連絡くださいませ。

8.登壇講師のご紹介

社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)
執行役員 社労士事業部本部長 近藤雅哉

クラシコの創業期から関わっており、コンサルタントとして数多くの顧客を担当。営業・商品開発などの経験を積み、同社の成長に大きく貢献する。2022年より社労士事業本部長に就任し、社労士事業を統括している。IPO・M&A支援にも携わっており、より健全な組織運営をおこなうための体制づくりを視野に、労務デューデリジェンス、アクションプランの策定・実行支援等を数多く手掛ける。顧問先からの信頼が厚く、経験と専門知識を活かし、お客様に寄り添った人事労務管理に関するアドバイスを得意とする。

白潟総研グループ ( https://www.ssoken.co.jp/
M&Aイノベーション株式会社 https://ma-innovation.co.jp/
代表取締役社長 畦田佑登

神戸大学 経営学部を卒業し、2010 年にデロイトトーマツグループのトーマツイノベーション株式会社に入社。 2018 年には神戸大学大学院 専門職大学院にて MBA を修得。経営、戦略、人事のコンサルティングを経験し、営業責任者として 500 社以上の教育制度導入支援を行う。 また、セミナー講師として累計900回以上、50,000人以上の社会人に研修を実施。その後、白潟総研の大阪支社立ち上げをし、2020年に白潟総研グループ内でM&Aイノベーション株式会社を設立。