あなたの採用•人事としての強みがわかる!

わずか3分で、あなたの採用・人事担当者としての強みを分析します。
仕事で活かすためのアドバイス付き!

自分もまだ気づいていない新しい強みに、出会えるかも…!?

 


価値観の多様化やワーク・ライフ・バランスを意識した働き方を希望する人が増えるなか、企業にとっては優秀な人材の離職率は少しでも下げたいところです。また、新入社員や若手社員は会社で良好な人間関係を構築し、実力を発揮する機会を得ながらスキルアップを図りたいと考えているでしょう。

しかし、社会変化の著しい現在において、従来と同じ新人教育だけで若手社員を育て、成長し続ける組織を作ることは難しいかもしれません。積極的に若手社員をサポートし、育成する工夫が必要です。そうした状況で注目されているのが「メンター」の存在。今回は、メンターとはどういった役割を担うのか、また、メンターを活用することで何が変わるのかなど、メンターの効果についても紹介します。

メンターの役割とは

メンターというのは助言を与える人、相談に乗る者という意味があります。会社においては、新人・若手社員の相談に乗る者ということになるでしょう。

新人・若手社員の相談に乗る者であるなら、上司や先輩社員が対応しているのではないか、と考える人もいるかもしれません。しかし、実際の職場では個人の価値観が多様化したことや、業務の細分化、人材不足など、さまざまな要因で上司や先輩社員だけが新人・若手社員の相談に乗り、成長を促すためのサポートをすることは難しくなってきています。そうした背景のなか、注目されているのが「メンター」という存在なのです。

では、メンターについて詳しくみていきましょう。

社員の心を支えるメンターの存在 

従来から職場の上司や先輩社員は、新人・若手社員にとっての身近で、相談に乗ったり、助言を与えてくれたりする存在でした。しかし、人材不足が深刻になるなか、上司や先輩社員がつねに丁寧な助言を与え、相談に乗れる環境であるとは言えません。また、新人・若手社員にとっては、上司や同じ部署の先輩社員に相談したり助言をもらったりすることが精神的にストレスを増大させる可能性もあります。

メンターという存在は、上司や先輩社員といった直接的に業務における関わりをもつ人とは限りません。他部署からメンターとして選ばれることもあります。そのため新人・若手社員にとっては、業務上の不安や悩みについても伝えやすい、遠慮なく不安や疑問を質問できる、相談しやすいといった存在なのです。

具体的に、どういった役割を担うのかをみていきましょう。

相談に乗る者・助言を与える者としての役割

メンターは他部署から選ばれることがあるため、相談者に対して直接的に業務に関する指導を行ったり、仕事の割り振りをしたりすることはありません。相談内容を聞き、客観的な視点を保ちながら、希望や目標を導き出す手助けをします。相談者自身が考えるためのヒントやきっかけを与えることがとても重要なポイントです。

相談内容 例)

・社会人としてどう対処すればよいのか

・仕事とは自分にとってどういう意味をもっているのか など

新人・若手社員の精神的支え

メンターは単なる仕事内容を教えるための存在ではなく、また、その会社におけるやり方やルールを教育するための存在でもありません。相談者が直面している業務上の悩みや不安に耳を傾け、自発的に乗り越えるための行動を起こせるように気持ちを支える存在だと言えます。

社会人としての成長を促すためのサポート

メンターはつねに客観的に相談者の立場を捉えることが重要です。そのうえで業務に必要となるスキルの高め方や将来的な働き方などについてアドバイスをし、相談者が自発的に仕事への意欲を高め維持できるようにサポートします。

メンターに適任な人材とは

メンターには、どういった資質が求められるのでしょうか。

  • 傾聴力・受容力・観察力

相談者を客観的に捉え、現状を正しく把握できる力が必要です。相談者の細かな動作や言動に意識を向け、観察することと、そうした言動や行動に表れる感情に共感する力も重要でしょう。

相談者がこの人になら話を聞いてほしいと思えるような受容力や丁寧に聴く姿勢などが求められます。

  • コミュニケーション能力

メンターは一方的に「そうすればよい」「この場合はこう対応すべきだ」などの指示は行いません。自分の意見や経験を押しつけるのではなく、ともに考えることが大切です。相談者が気軽に話を続けられる関係性を構築できることが重要です。そうした総合的なコミュニケーション能力が求められます。

  • 経験値と向上心

メンターは相談者と年齢が近い別の部署の先輩社員が選ばれることが多いのですが、悩みや不安に共感するためには、ある程度、相談者と同じ業務を経験していることも重要です。また、相談者の悩みや不安を自分自身のものとして、解決策について熱意をもって考える向上心や成長意欲も必要です。

  • 責任感

新人・若手社員の成長をサポートすることになるメンターは、個人的な悩みや不安を聞くことになるため、相談者の内面を共有することにもなります。相談された内容を口外しないことはもちろん、相談者をライバル視して高圧的な態度をとったり、不適切な助言を与えたりしてはなりません。メンターとしての責任感が保てる人材であることは重要です。

  • メンターの役割に対する理解度

「新人・若手社員の成長をサポートすることで、社員全体の意欲が高まり、スキルが向上すれば会社の組織力も向上する。」という理解が深まるのが理想的です。そのための役割を担うのがメンターであることを十分に理解し、メンターとしての経験が自分自身の成長にもつなげられると意欲的に取り組める人材が適任だと言えるでしょう。

社内のサポート制度の種類と違い 

社内に設けられているサポート制度にはいくつか種類があります。たとえば、OJT制度やエルダー制度、コーチング、ティーチングなどです。メンターを設けて新人・若手社員の成長をサポートするメンター制度もそのひとつです。ここではそれぞれの違いと内容をみておきましょう。

OJT制度

OJT制度では、新人・若手社員に対して、配属された部署で、実務を通して業務を行ううえで必要となるスキルや知識、やり方について教えます。いいかえれば、一日でも早く新人・若手社員が即戦力となることを期待した教育制度であると言えるでしょう。

実務能力の向上という限定された教育制度でもあるため、指導者には、同じ部署や、同じチームで業務にあたる年齢の近い社員が担当することが一般的です。

エルダー制度

OJT制度と同様に実際に同じ業務を担当する先輩社員が実務的なことを指導するのがエルダー制度です。

メンター制度とのそれぞれの違い

上記2つの教育制度とメンター制度の違いは、指導にあたる先輩社員が直接的に同じ業務にかかわる人でないということが多いことでしょう。つまり、メンター制度は実務能力の向上を直接的に教えるためのものではない、ということです。

サポート内容は、業務のやり方、必要な知識やスキルを直接的に指導するのではなく、相談者の悩みや不安に寄り添うことが重要に。そのうえで、自ら考え行動するために必要な助言を与えるのが、メンター制度におけるメンターの大きな役割であると言えるでしょう。

※メンター制度の詳細やメリットについては https://www.ssoken.co.jp/column/1516/ をご参照ください。

メンター制度を活用している企業

それぞれの企業状況によって新人・若手社員育成に関する課題は違います。メンター制度をそれぞれの課題解消につながる取り組みのひとつとして活用している企業の事例を参考に、どのような目的で導入しているのかをみてみましょう。

キリンホールディングス株式会社:女性のキャリア設計を支援

キリン株式会社は2008年から「キリンメンタリングプログラム」をはじめました。目的は「女性経営職のキャリア支援」と「女性総合職の継続就業支援」です。

このメンター制度におけるメンター人数は累計で46人、メンティー(相談者)は累計67人。スケジュールは3段階で進み、第1ステップ(半年)、第2ステップ(半年)、第3ステップ(半年のグループと1年のグループ)です。

女性総合職の継続就労支援や女性経営職へのステップアップ支援が目的であったため、メンターには役員が含まれました。そして、第1ステップで役員のメンタリングを受けたメンティー(相談者)が、第2・第3ステップではメンターになるなど、メンタリングと、メンターの育成を同時に行ったことも、このプログラムの特徴です。

こうしたプログラムを実施した結果、重要なポストや新たな職域への女性登用が進んだこと、総合職女性社員の5年目の離職率が低下したこと、また、社員の意識が変化し「女性の活躍を支援することは重要だ」とする考え方が広がっていることが実感されました。

トヨタ自動車株式会社:若手社員が自分の声で会社が変わることを実感

トヨタ自動車株式会社では、2018年に「モビリティ・カンパニー」へと企業モデルをチェンジさせ、メーカーからサービス会社へと大転換を行いました。それに伴い、若手社員が戸惑いや不安を抱くケースが現れてきました。また、新人・若手社員への連続的なサポート体制が取れていなかったことも明らかになりました。こうした背景があり、キャリアサポートとしてメンター制度を活用。「めんどう見」と呼ばれるサポート体制では、直属の先輩のみならず多くのサポート者を設定して、年次が近く、似た経験をしている先輩を新人・若手社員に紹介するなど、コミュニケーションの場を積極的に作りました。

社員一人ひとりの相談に向き合って、具体的な行動へとつなげるサポート体制を構築したおかげで、「自分の声で会社が良くなっている」「働く環境が変わっている」といった若手社員が組織の変化を実感し、また、トップやマネジメント層における育成方法も、「会社主体の育成」から「社員主体の成長」へと変わってきました。

古野電気株式会社:若手社員が本音で話ができる環境を構築

産業用電子機器メーカーである古野電気株式会社では、新型コロナウイルス感染症が拡大してから新人・若手教育が順調に進まなくなったことをきっかけとして、メンター制度を導入しました。具体的には、若手社員と指導者との年齢的なギャップが大きく、若手社員から気軽に質問ができる状況ではなかったこと、また、指導にあたる上司や先輩社員が忙しく、十分な指導やサポートができなかったことなどの問題点が明らかになりました。

メンター制度を導入にあたっては、社内で社員同士が本音で相談しあえる風土を作ることを重視しました。まだ導入して間がないため、運用上の成果は明確ではありませんが、仕事の悩みについて自己解決することに課題を感じている者にとっては、メンタリングによる効果が期待できると感じています。

メンターの役割を理解し、組織力強化にもつなげよう

メンターは新人・若手社員の成長を促すために重要な役割を担っていることをみてきました。

メンティー(相談者)のメンター(相談に乗る者)に対する信頼が高まれば、業務へのモチベーションも高まり、会社への愛着も深まる可能性があります。そういう関係性が広がれば、社員のエンゲージメントの高い組織へと成長することが期待できます。

また、メンティーと向き合うことで、メンターとなる社員自身の成長も期待できます。つまりメンターを活用した制度を作ることで、組織力が強化されると言えるのです。

人材育成の観点からのみならず、成長し続ける組織づくりの手段としてもメンター制度の導入を考えてみましょう。