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副業解禁の流れが加速するなかで、社員から副業解禁を望む声が出てきている企業も多いのではないでしょうか。しかし、実際に副業を解禁するとなると、さまざまな影響を鑑みて慎重にならざるを得ない企業も少なくありません。

そこで今回は、副業を解禁している企業の割合や副業人材の需要、人材採用の面から見てどのようなメリットがあるかを解説するとともに、副業を解禁する場合のスタイルの違いについても紹介します。

【副業の現状】認める企業・求める社員

はじめに、副業を認めている企業はどの程度の割合なのか、さらに、副業をしている、または副業の意向がある社員はどの程度存在するのか、現状について詳しく解説しましょう。

副業を認めている企業の現状

副業を認めている企業はどの程度の割合で存在するのか、現状を見ていきましょう。

経団連が2020年に調査した「2020年労働時間等実態調査」の結果によると、副業を認めている企業の割合は22%に留まっています。働き方改革の目玉施策として位置づけられているにもかかわらず、副業を認めていない企業のほうが圧倒的に多いことが分かります。

副業を認めていない企業の主な理由としては、「長時間労働の懸念」や「社員の健康確保」などが挙げられます。これを裏付けるように、インターバル規制が設けられている運輸・郵便業、身体的負担が大きい建設業は副業の解禁に慎重な傾向が見られ、認めている割合はわずか15%に留まります。

反対に、情報通信業は52%もの企業が副業を認めており、これは業種別に見ても圧倒的に高い割合を示しています。冒頭に紹介した22%という数字は全業種の平均値であり、業種ごとに細かく見ていくと副業を認めている企業の割合は必ずしも低いとは言いきれないことも事実です。

副業をしている正社員の現状

次に、実際に副業を行っている社員はどの程度の割合で存在するのか見ていきましょう。

2020年2月に厚生労働省が調査した「副業・兼業に関する労働者調査結果」によると、対象者159,355名への調査のうち、「副業をしている」と回答したのは、全体の9.7%に留まっています。

本業の就業形態別に見てみると、「自由業・フリーランス・個人請負」が29.8%ともっとも高く、次いで「自営業」の19.4%となっています。一方、副業割合がもっとも低いのは「正社員」で、全体のわずか5.9%に留まっています。

ただし、現在も副業・兼業を認めていない企業が大半であることを考えると、正社員の副業割合が低いのも当然の結果といえるでしょう。今後、副業を容認する企業が増えれば、およそ3人に1人が副業をしている自由業やフリーランスのように、正社員にも副業が浸透していくのではないでしょうか。

人材採用面から見た!社員の副業解禁メリット

では、人材採用の面から見て、企業が副業を解禁することはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントをピックアップして紹介します。

人材採用の間口が広がる

民間企業を中心とした複数の調査では、20代、30代の若年層ほど副業を実施している、または副業に取り組んでみたいという意向が高いことが分かりました。反対に、40代、50代になるにつれて副業への意向は少なく、消極的な傾向が見られます。

現在、多くの企業では人手不足により若手人材の獲得競争が激化しています。従来のように企業が候補者を選ぶのではなく、候補者に選ばれるような魅力的な企業でなければ人材の獲得が難しいのが現状です。

副業を解禁している企業は、就職や転職を検討している候補者からは魅力的な企業として認識され、採用の間口が広がることが期待できます。その結果、多くの候補者がエントリーし、優秀な人材を獲得しやすくなるメリットがあるでしょう。

社員の定着率アップが見込める

転職が当たり前の時代となり、人材の流動性が徐々に高まっている現在、給与や休日といった待遇の条件や、ほかにやりたい仕事がある場合などの理由で転職を検討する社員も少なくありません。

しかし、副業を解禁することにより、企業に所属しながらやりたい仕事に挑戦できるほか、本業とは別に所得のアップも目指せます。副業が禁止されているままでは、企業に残るか辞めるかの二択を迫られてしまいますが、副業という選択肢があることで離職を思いとどまらせ、定着率のアップにつながると期待できます。

新たな人脈の獲得

社員が副業を通して多様なスキルを身につけ、さまざまな経験を積むことで、社外にさまざまな人脈が形成されることもあります。事業パートナーとして自社と提携し、新たな事業戦略を構築することはもちろんですが、自社に優秀な人材を紹介し、採用につながることも期待されるでしょう。

社員の副業を認める「3つのスタイル」とは

企業が副業を許可するにあたっては、主に「許可制」「届出制」「完全自由」という3つのスタイルがあります。それぞれどのような違いがあるのかを紹介するとともに、それぞれのメリット・デメリットも解説しましょう。

許可制

許可制とは、社員が企業に対し副業の申請を行い、企業が個別に許可を与える方法です。特定の職種や業種、企業が定める条件に合致しない場合には不許可とすることも可能です。

許可制は社員の労働時間管理や自社の利益を守るうえでも有効なスタイルであり、副業を解禁している多くの企業で採用されている方法でもあります。

  • メリット

社外への情報漏えいを防げるほか、競業避止義務によって同業他社での就業や競合する事業の設立を禁止し、自社の利益を守れます。

  • デメリット

副業を不許可とする場合、明確な基準やルールが求められます。

届出制

届出制とは、社員が行う副業の内容を事前に届け出てもらうことを条件に副業を認める方法です。許可制とは異なり、企業は個別に許可・不許可の判断はくださず、原則としてすべての副業を認めます。

  • メリット

許可・不許可を個別に判断する必要がないため、申請にかかる手続きや処理は簡略化されます。また、原則として副業が不許可となることがないため、社員の満足度向上が期待できます。

  • デメリット

他社に社内情報が漏えいする懸念が生じます。また、競合他社での勤務を阻止することが難しく、自社の利益が確実に守られる保証もありません。

完全自由

完全自由とは、社員の副業に対して企業は許可・不許可の判断をせず、届出も一切不要とする運用方法です。

  • メリット

就業先や就業時間、業務内容など、副業に関する社員ごとの管理が一切不要であり、企業として手間がかかりません。また、社員も面倒な申請が不要のため、満足度向上が期待できます。

  • デメリット

社員ごとの労働時間が把握できないため、長時間労働につながるおそれがあります。また、情報漏えいや競合他社での勤務を阻止することが難しいのも大きなデメリットといえるでしょう。

副業解禁を求める社員は今後増える可能性も

さまざまな統計結果からも分かる通り、副業を解禁している企業の割合は決して高くなく、実際に副業に取り組んでいる社員も少数派といえます。

しかし、20代、30代の若年層を中心に、副業に興味を抱いている社員は多いことも事実です。現時点で自社の社員から副業解禁を求める声は少なくても、今後増えていく可能性も十分考えられるでしょう。

副業の解禁にあたっては、許可制や届出制、完全自由といったスタイルの違いを把握し、自社に合った方法を検討することが重要です。


参考: