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深刻な人手不足が続くなか、企業の採用活動は厳しさを増しています。やっとの思いで採用に成功しても、採用のミスマッチが起こると短期離職につながるケースも少なくありません。
そのような問題を解決するための方法として、採用ペルソナの設計が注目されています。今回は、採用ペルソナとはなにか、採用ペルソナが重要な理由や設計の流れ、取り入れるべき項目の例などもあわせて解説します。
採用ペルソナとは
「ペルソナ」とは、主にマーケティング業界で用いられる概念で、想定顧客をモデル化したものです。
そして、マーケティングで用いられるペルソナの手法を人材採用に生かしたものを「採用ペルソナ」と呼ぶのです。マーケティング業界におけるペルソナと同様に、採用ペルソナは採用すべき人材をモデル化して活用します。
採用ペルソナと人材要件の違い
採用すべき人材のモデルと聞くと、人材要件と同じものと捉えられるケースも少なくありません。しかし、採用ペルソナと人材要件は異なる概念といえます。
人材要件とは、自社が求めるスキルや実務経験などの条件を羅列したもので、募集要項にも「求める人材像」などのように記載されることがあります。
これに対し採用ペルソナは、自社が採用したい人材の理想像を具体化・モデル化し、学歴や年齢、趣味、理想とする働き方、居住地などを設定します。なお、採用ペルソナは人材要件をベースに設定することが基本です。
※人材要件について、詳しくは<2-1記事リンク>をご参照ください。
採用活動でペルソナ設計が重要な理由
企業が人材を採用するにあたって、「人材要件を設定していれば、わざわざ採用ペルソナまで設定する必要はないのでは?」と考える方もいるかもしれません。採用活動において採用ペルソナを設計するのはなぜなのでしょうか。
採用のミスマッチを防ぐため
現在、日本企業の多くは深刻な人手不足に陥っており、求人市場は長きにわたり売り手市場が続いています。求職者にとって転職のハードルは以前に比べて低く、より良い条件を求めて転職をするケースは決して珍しくありません。
しかし、企業にとってみれば、コストと時間をかけて採用しても、採用のミスマッチが発生すると短期離職につながるケースがあります。短期離職率が高くなると採用コストが無駄になるばかりか、「ブラック企業」の烙印を押され、募集をかけても候補者が集まりづらくなることもあり得ます。
そこで、企業が人材を採用する際には、候補者一人ひとりの適性や特性を把握したうえで、採用のミスマッチを防ぐことが重要です。
理想の人材像をペルソナとしてモデル化することで、実際の候補者と比較でき、的確に候補者を絞り込めるのです。
採用ペルソナ設計の流れ
では、採用ペルソナはどのような流れで設計すれば良いのでしょうか。採用ペルソナの設計から、実際の選考に役立てるまでの流れを5つのステップに分けて解説します。
1.採用目的の明確化
はじめに、なぜ人材を採用する必要があるのか、採用目的を明確化します。
たとえば、「欠員が出て補充しなければならない」、「新事業のスタートに向けてプロジェクト要員を確保する必要がある」など、どのような理由で人材を採用するのかによっても求める人材像は異なってきます。
2.人材要件の定義
次に、採用目的に合わせて、以下のような人材要件の定義をすることも重要です。
- スキル
→例)応用情報技術者資格取得・ネットワークスペシャリスト資格取得
- 実務経験
→例)ネットワークエンジニアとして3年勤務・プロジェクトリーダーとしてプロジェクトマネージャーを補佐
- 行動特性
→例)プロジェクトマネージャーの補佐的な役割を担っていた経験から、細かな調整や現場担当者へのフォローが得意
- 仕事に対して求める考え方
→例)今後は経験を積みプロジェクトマネージャーへのキャリアアップも考えている
複数の部門やチームの人材を採用する場合、配属先や職種によっても人材要件は異なるはずです。そのため、一律で定義するのではなく、部門やチームごとに人材要件を定義することが重要です。
3.人材要件をもとに採用ペルソナの設計
採用目的と人材要件をもとに、具体的に人物像をイメージして採用ペルソナを設計します。
採用ペルソナの設計で重要なのは、保有資格や実務経験などをもとに、年齢や家族構成、趣味や居住地などをストーリーとして組み立てることです。
4.設計した採用ペルソナの確認
採用ペルソナとして組み立てた仮の人物像を経営層や配属予定の現場担当者へ見てもらい、食い違いがないか確認します。このとき、採用ペルソナとして設定した人材要件の優先順位もすり合わせておきましょう。
求人市場の動向と比較し、高すぎるスキルや非現実的な要件がある場合には条件を検討し直すことも重要です。
5.求人募集・選考
求人募集を行い、設定した採用ペルソナをもとに候補者の選考を実施します。
採用ペルソナはあくまでも架空の人物像である以上、完全にマッチする人材を選ぶのは至難の業です。そのため、人材要件の優先順位を参考にしつつ、応募者と採用ペルソナを照らし合わせながら選考を進めることを心がけましょう。
採用ペルソナに取り入れるべき3つの項目
採用ペルソナを設定する際、具体的にどのような項目を取り入れれば良いのでしょうか。最低限取り入れるべき3つの項目と、その理由について紹介します。
属性(年齢・性別・学歴・職歴)
求める人物像を具体化するうえで、年齢や性別、学歴、職歴といった候補者の基本的な属性は重要なポイントといえます。
たとえば、即戦力人材を求めるのか、中長期的に自社のコア人材として育成していくのかによっても、採用したい人物像は異なるためです。
スキル(実務経験・保有資格)
業務の特性上、下記のようなスキルが求められる場合には明確化しておきましょう。
・専門的な知識
・資格
・実務経験
たとえば、ITエンジニアとして開発部門での実務経験がある場合でも、SEやプログラマー、ネットワークエンジニアなどジャンルは多岐にわたります。プログラミングの実務経験があったとしても、使用する言語によっては自社の採用条件に合わないこともあるでしょう。
そのため、実務経験や保有資格はできるだけ具体化しておくことが重要です。
考え方(人柄・価値観)
企業カルチャーとマッチした人物を採用するためには、応募者の人柄や価値観の見極めが重要です。
たとえば、さまざまなアイデアを提案し主体的に仕事を生み出していきたいと考える候補者もいれば、与えられた仕事に真摯に向き合いたいという考えの候補者もいるでしょう。
トップダウン型の企業カルチャーでは、前者よりも後者のほうがマッチしていると考えられ、採用のミスマッチを未然に防止できます。
採用ペルソナの例
最後に、ここまで紹介してきたポイントをもとに、採用ペルソナを作成する際に参考にしておきたい項目の具体例を紹介します。
- 性別:男性
- 年齢:30歳
- 最終学歴:◯◯大学◯◯学部◯◯学科
- 職歴と実務経験:◯◯株式会社(2014年4月〜)で法人営業へ従事
- 家族構成:配偶者あり・子どもなし
- 保有資格:◯◯
- 趣味:音楽フェス・キャンプ・釣り
- 性格:趣味で知り合った友人も多く社交的
- 理想とする働き方:成果に対して正当に評価され、ワークライフバランスが充実した働き方
- 今後身につけたいスキル:◯◯
企業によっては、上記以外にも採用ペルソナに取り入れたい項目が出てくるかもしれません。上記をベースに考えることで、スムーズに採用ペルソナを設定できるのではないでしょうか。
採用ペルソナを設定し採用のミスマッチをなくそう
人材要件をもとに人物像を具体化した採用ペルソナを設定しておけば、採用すべき人材がイメージしやすくなります。
経営層や現場が求める人物像との乖離をなくすためにも、採用ペルソナの設定は重要といえるでしょう。採用のミスマッチを防ぎ、精度の高い人材採用を実現するうえでも、採用プロセスのなかに採用ペルソナを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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