M&Aのフローの中にある「トップ面談」は、売り手企業と買い手企業が一番最初に顔を合わせる機会です。トップ面談をうまく進めることが出来れば、M&Aの流れ自体が非常にスムーズになります。

本記事では、トップ面談において中小企業が押さえるべきポイントをご紹介します。

目次

1.トップ面談とは

まずはトップ面談の定義からご紹介します。

弊社では、以下のように定義しています。

では、トップ面談はM&Aのフローの中でどのあたりに位置するのでしょうか?

以下がM&Aのフローです。

冒頭でも記載しましたが、売り手企業と買い手企業がはじめて顔をあわせるタイミングがトップ面談です。M&Aの取り組みをスムーズに進めていくためには、第一印象は極めて重要です。
良い印象を与えることが出来れば、スムーズかつスピーディに交渉が進みますが、そうでないとそもそも交渉が進まなくなる可能性が高くなります。

※上記資料は買い手企業向けです

2.トップ面談の流れ

トップ面談が、具体的にどのような流れで進むのかをご紹介します。

<流れ>
①売り手企業の自己紹介
②買い手企業の自己紹介
③質疑応答

①売り手企業の自己紹介
ここでは、売り手企業側の代表自身の紹介や、会社・事業の紹介を中心にお話いただきます。(他には、これまでの歴史や経営において大切にしてきたこと、社員構成などをお話されることもあります)
また、譲渡背景や売り手企業が大切にしているポイントなどがあれば、あわせて確認できると良いです。

②買い手企業の自己紹介
買い手企業側の代表自身の紹介、会社・事業などの紹介をお話いただきます。
また、M&Aに取り組んでいる理由や相手先を魅力に感じている点もお話いただけると良いと思います。

③質疑応答
お互いに気になっている点などを質問していただき、解消していただきます。
なお、質問内容はトップ面談前に事前にお考えいただき、上記①②の中で出てこなかったところや、深堀りされたい点を気兼ねなく質問していただけると良いかと思います。

開催場所や回数、時間などについてもよくご質問をいただきますので、以下でご紹介します。

開催場所については、売り手・買い手の双方とお話をして決定しますが、
アドバイザリーのオフィス、もしくは、買い手企業側のオフィスで開催するケースが多いです。

トップ面談の回数に決まりはありません。

ある入門書に「1つの案件につき、面談は30回必要」と書いてあった。それほど先方と議論を尽くすこと、また濃密な信頼関係を築くことが重要という教えだったのだろう。

私はこれを、当時から今日まで実践し続けている。それも単に数をこなせばいいという話ではない。戦略が曖昧なのは性に合わないので、きっちり30回分の議論をシミュレーションして臨むことにしている。

宮原博昭,M&A経営論―ビジネスモデル革新の成功法則(東洋経済新報社)

3.トップ面談のポイント

相手側に良い印象を持ってもらうためには、どうすればいいのか?

そのポイントについて、「信頼を失わないための取り組み」と「信頼を得るための取り組み」の2つに分けてご紹介させていただきます。

○信頼を失わないための取り組み○

1.約束を守る(時間や納期など)
2.情報を隠さない
3.最低限、見た目を整える
4.丁寧な言葉遣いをする
5.条件交渉をいきなりはじめない
6.高圧的な態度をとらない

上記6つの内容は、ごくごく基本的なことです。
「当たり前に出来ているよ!」という方もいらっしゃると思いますので、そういった方は読み飛ばしてください。

なお、6つのうち時々見かけるケースとして、以下の3つが挙げられます。

2.情報を隠さない
情報を隠している訳ではありませんが、具体的な情報、良くない情報をしっかり開示しなければ、相手からすると「なにかやましいことがあるのかな?」と思われることがあります。
そのため、相手から聞かれた質問や依頼された資料については、しっかり回答されることをオススメします。

5.条件交渉をいきなりはじめない
相手の気持ちが前向きになっていない状況でいきなり条件交渉をはじめることは、気持ちの良いものではありません。条件交渉については、アドバイザリーを介して進める方がスムーズにいきますので、そちらをオススメいたします。

6.高圧的な態度をとらない
買い手企業側が、「自分は買い手なので選ぶ立場だ」と、高圧的な態度をとられることがあります。
これも相手からすると、気持ち良くはありません。

信頼を得るための取組み〇

1.相手の話をよく聞く
2.共通点を探す
3.好意を示す
4.お互いの利益について話す(M&Aの後)
5.実績などの紹介時に権威や評判を活用する
6.お土産を持っていく
7.接触回数を増やす

1.相手の話をよく聞く
自社のアピールをするために、ついつい自分のことを話しすぎてしまう方もいらっしゃいます。
人間は相手の話を聞くよりも、自分の話を聞いてもらった方が嬉しくなる生き物です。
アピールしたい気持ちを抑え、まずは相手の話をしっかり聞くようにしましょう。

2.共通点を探す
心理学で「類似性の法則」というものがあります。
※類似性の法則:自分と共通点を持つ人に親近感を覚える心理作用
出身地や出身校、過去在籍していた会社や趣味など、共通点を見つけ出すことが出来れば、初対面の人とも距離を一気に縮めることが出来ます。

3.好意を示す
好意(称賛など)を相手から示されると、当然、心を開きやすくなります。

4.お互いの利益について話す(M&Aの後)
お互いにどんな利益を求めているのか?をしっかり話をすることは非常に重要です。
そのためには、まず相手がどんなことを求めているのか?をしっかりと聞くことが大切です。
またアドバイザリーに聞けばある程度知ることが出来ますので、あらかじめ準備してトップ面談へ臨むことができます。

5.実績などの紹介時に権威や評判を活用する
会社紹介をされる際に、外部からの評判を活用しましょう。
そうすることで、相手により信頼感を与えることができます。

6.お土産を持っていく
M&Aの1つの文化になっていますが、買い手企業側は特にお土産を持っていくことをオススメしています。最初の話題にもなりますし、良い印象を与えることが出来ます。

7.接触回数を増やす
人間は接触回数が増えれば増えるほど、相手へ好感を抱くようになる、というものです。
これはザイアンスの法則「単純接触効果」と呼ばれるものです。

私がこれまで携わったM&Aについて、成立するまでに先方と面談した回数を調べてみたところ、平均で35回だった。

コミュニケーションに徹底的に時間をかけること。それも、終わってみたらこれだけ多く会っていた、というわけではない。先述の作戦立案に則り、1回目には何を聞き、2回目には何を話し、〇回目にはこのテーマについて打診し、〇〇の件で揉めたらこう提案する等々、できるかぎりシミュレーションして臨むのが常だ。それを積み上げると、だいたいこれぐらいの回数になるのである。

宮原博昭 M&A経営論―ビジネスモデル革新の成功法則(東洋経済新報社)

今回、トップ面談について、ご紹介させていただきました。
少しでもみなさまの面談、M&Aがうまくいくことを願っています。