【”遊び”が人を育てる】部活動12個・社員会で組織を強くするIT企業の人材育成術【エス・エー・エス/青山秀一代表/後編】

動画でわかること

  • 部活動12個が"人を育てる"仕組み
  • 社員会費 月1万円天引きの運営設計
  • 非認知能力を伸ばす"遊び"の戦略的活用
  • 5年に1回の海外社員旅行を支える資金設計
  • 赤字M&Aから売上6億円に育てた経営判断

1分で読める要約

「幹部育成・人材育成の要は部活動」——エス・エー・エス株式会社では184名の社員が12(実質13)のクラブ活動に所属し、代表の青山秀一さん自身も全クラブに参加しています。各部には部長・副部長・会計・監査の4役があり、年間計画・予算立案から実行・会計報告までを社員が経験することで、経営マネジメントの実地演習になっているといいます。

もう一つの柱が、全社員が毎月1万円を天引きで積み立てる「社員会」。ボーリング大会や忘年会、5年に1回の海外社員旅行(プロパー104名・家族含め203名参加)など、福利厚生の運営を社員自身が担います。社員会の理事長経験者はその後幹部になる率が高いそうです。

動画では、活動を軌道に乗せるために欠かせない"パッション"の重要性や、懇親会での偶然の会話から生まれた子会社M&Aのエピソード(現在は年商約6億円のストック型事業に成長)、そして「お金を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すは一流」という青山さんの経営哲学も語られています。

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00:00 ダイジェスト
00:31 本編開始
00:59 エス・エー・エス株式会社の部活動
07:00 幹事・部長の経験で得られるもの
10:56 エス・エー・エス株式会社の福利厚生
14:45 社員会の仕組み
20:00 活動を軌道に乗せる方法
22:40 勤労の獅子立ち上げの経緯
25:34 青山社長の今後のビジョン
26:58 エンディング

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文字起こし(音声認識)を読みやすく整形したものです。実際の発言と細部が異なる場合があります。

本編開始

石川:後編では、幹部育成・人材育成・組織づくりについてお伺いしていきたいと思います。エス・エー・エスさんの人間力、組織の仲の良さ、使命へのつながりで特徴的なのが部活動ですよね。部活動で人が育ち、仲が良くなるというのがエス・エー・エスさんの特徴なのかなと思うのですが、教えていただけますか?

エス・エー・エス株式会社の部活動

青山:我々は今184名で、部活動は12個あります。スポーツ系が8個、文化系が4個です。私はちなみに全部出ています。あとはクラブではないんですが、千葉県の御田植(お米作り)も1から作っていて、それも含めると13個ですね。クラブでいうと、野球部から始まってゴルフ、フットサル、ボーリング、テニス、スキー・スノボー、バスケ、ラン(ランニング)まで、ここまでが運動系です。別で日本文化研究会、健康麻雀研究クラブ(お酒・タバコ一切なし)、フォト部(年間カレンダーも作ってくれています)、料理部があります。

石川:日本文化研究クラブというのは?

青山:これから海外の方とお仕事することも増える中、うちのメンバーが海外に行った時に「日本人なのに歌舞伎を知らない」というのは良くないねということで、クラブ活動を通じて日本文化をしっかり学んでいこうと。単に観に行くだけでなく、幹事さんが歌舞伎の資料を作ってくれて、事前にマナーなども含めて学んでからいくということもやっています。健康保険組合の草野球大会にも出ていて、去年はベスト8まで勝ち上がりました。私も還暦ですが今年もまだ先発で投げています。フットサル部もコロナで練習が減って弱くなってしまったので、今また練習に励んでいますね。

幹事・部長の経験で得られるもの

石川:この部活動、組織コンサルの観点から見ても着目すべき点が2つあると思っていて、1つは組織のフラットさです。人間関係のつながりの数に差がないほどその組織は幸福だという研究がありますが、同好会や部活動で斜めの非公式なつながりを作ることはすごく効果的だと思います。もう1つは、非認知能力(外から見えない能力)を伸ばす効果です。これはまさに青山社長の言う「人間力」だと思うのですが、スポーツや文化活動がこれを伸ばすのにものすごく効果が高いというのが分かっています。

青山:それは間違いなく狙いとしてもありますね。特に不安な人ほどこういう場に誘って参加してもらったりしています。

石川:参加は自由なんですか?

青山:参加は自由です。何個入ってもいい。うちの家内もデフォルトで7つ入っています。今184名ですが、延べ人数でいうと540名ぐらい、1人平均2.3個ぐらい入っている計算になります。

石川:幹事や部長の経験が幹部育成につながっているなと思ったのですが、その仕組みも教えていただけますか?

青山:各部活には必ず部長・副部長・会計・監査の4役がいます。これはクラブを運営する上で必要で、会社の組織運営と同じです。年間の活動計画を立ててもらい、それに応じて必要な予算を根拠立てて申請してもらい、経営会議で審議してOKを出します。全部合わせると年間400数十万円ぐらいのボリュームで、多いところだと70〜80万円の予算になります。それを実行していく中でもチームを組成して、部長がマネジメントを行います。会計資料は年2回提出してもらうので、これが将来組織のトップになった時にそのまま身についています。「これ、経験あるからできる」という積み重ねになるので、部活動はすごく有効なんです。いい人材を組織に増やしていくには、まずやる気と経験だと思っています。このやる気はお客様にも伝わって、「エス・エー・エスに任せよう」という信頼にもつながるんです。クラブ長は2〜3年で交代というルールにしていて、次のクラブ長を自分で見つけて依頼していく。これは組織が成長していくために必要な「右腕・左腕・場合によっては影武者」を自分で作っていく練習にもなっています。しかも遊びの中で失敗できる、プチ経営・プチマネジメントのシミュレーションになっているんです。

エス・エー・エス株式会社の福利厚生

石川:この部活動以外にも、福利厚生で面白い取り組みがいろいろありますよね。海外旅行にみんなで行かれたりとか。

青山:毎年、国内の社員旅行を行っています。我々の経営理念のうち「ライフ」の部分は、エス・エー・エス全メンバー(プロパー社員とご家族、ビジネスパートナー様、お客様)の生活水準の向上と、地域社会への貢献を掲げています。国内旅行はプロパーとそのご家族を連れてきていいことにしていて、半額を会社が負担します。海外の場合は予算が高くなるので、5年に1回行こうと決めています。昨年の30周年はゴールドコースに行き、プロパー104名とご家族・お付き合いされている方を合わせて99名、合計203名で行ってきました。このご家族等99名分は全額会社負担です。旅行費用は毎年、引当金や積立を計上して備えているので、その年だけ急に決算が悪くなるということはないよう対策しています。5周年はラスベガス、10周年はケアンズ、15周年はハワイ、20周年はシンガポール、25周年はコロナで見送りとなり、今回10年ぶりのゴールドコースになりました。

社員会の仕組み

青山:これらのイベントは全部「社員会」が運営しています。社員会にも理事長・理事がいて、新人は必ず補佐から入ってもらいます。全員が社員会に所属し、新人であろうと容赦なく毎月1万円を給与天引きします。それを社員会の口座に入れて、毎月100数十万円が積み立てられていきます。原理原則として半額は会社が負担し、半額は社員会に積み立てられたものから出す形でイベントを運営します。社員会がやってくれているのは、4大イベント(ボーリング大会、バーベキュー大会、忘年会、社員旅行)に加えて、毎月の全体会議後の懇親会(渾身会)も会社が全額出しています。理事長・理事を1年間しっかり務めた人は、その後幹部になる率も高いなと感じています。実はこの社員会を作ったきっかけは、創業当時、社員旅行の宴会で私(青山さん)とすれ違ったメンバーが酔っ払って「このホテル大したことないっすね」と言ったことでした。それを聞いて「社長が偉すぎるんじゃない」という指摘だと気づき、緊急役員会を開いて社員会制度を発案。翌日にはもう規約ができていて、みんなの前で発表しました。今では一般メンバーもやる気があれば理事長になれる仕組みになっています。

活動を軌道に乗せる方法

石川:部活動も社員会も、立ち上げて軌道に乗るまでを青山社長が最初にやってこられたんですよね。

青山:そうですね、初めのうちの仕掛けはやりましたね。よく講演でも「イベントをやったけど人が集まらない」という相談を受けますが、大体メールで募集しました、というやり方だと集まらないんです。パッションがすごく大事で、野球部の立ち上げが典型的でした。当時野球好きの役員がいて、彼が毎月の懇親会で片っ端から「一緒に野球やろうぜ」と誘って回り、バーベキューでグローブを持ってきてキャッチボールを始めたりして、盛り上げて盛り上げて、結果ほとんどのメンバーが入部しました。何もなくいきなりメールで募集しても集まらないというのはよくお伝えする話です。パッションを持って伝えることが大事で、中小ベンチャーであれば社長自身が本気でやりたいことをやる、または任せる相手に全面的にバックアップすることが、組織への浸透にも活動の継続にもつながります。

勤労の獅子立ち上げの経緯

石川:組織のお話をたくさんお伺いしてきましたが、御社の始まりはM&Aだったというお話もちょっと伺っていて、教えていただけますか?

青山:私はあるIT業界の協会で理事をしていて、経営委員会の委員長をやっていた時期がありました。ある時、委員会後の懇親会がたまたま4人しか出席がなくて、その時にある社長からM&Aの話がありました。上場企業の子会社を譲りたいという話で、勤怠管理システムを扱う会社でした。我々はその前に派遣会社さんにそのシステムを納めていた縁もあって「うち興味あります」と手を挙げました。他の2名は全く興味がないということだったので、そこから話がとんとん進んで、まるごと引き受けてSSクラウドという子会社にしました。当時はパッケージ型の事業でクラウドモデルではなく、先方もクラウド化するための投資はできないという状況でした。我々はクラウド事業をやりたかったので、思惑が合致した形です。当時数千万円だった事業規模は、今では6億円ぐらいまで成長し、売上の85〜90%がストック型の安定的な事業になっています。「欲しいものを具体的に描いておくと、そういうチャンスがきた時にすぐに手にできる」という一例だと思います。

青山社長の今後のビジョン

石川:最後に、今後どんな会社を目指していきたいかお伺いしてもいいですか?

青山:みんながいろんなことができるような環境を作るのが、私だけでなく役員も含めた経営者の仕事だと思っています。それがずっとできて、ゆくゆくはうちの会社を定年で卒業した後も、どこでも活躍できるような人材を輩出し続けるような組織でありたいと思っています。私も尊敬している方の言葉で「お金を残すは三流なり、事業を残すは二流なり、人を残すは一流なり」というものがあって、人を残していく組織にしたいという想いがあります。お金や利益がどれぐらいというのは結果としてついてくるものなので、それを先に追うのではなく、そういう組織づくりをしながら、平均年収をどれぐらいにするかにこだわっていきたいと思っています。

前編はこちら

【"遊び"が人を育てる】部活動12個・社員会で組織を強くするIT企業の人材育成術

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