【PMIは100日で終わらない】M&A後に中小企業が伸びる準備期間の使い方【SDアドバイザーズ/高木栄児 代表/後編】
動画でわかること
- 100日プランでは終わらない──PMIに最低1年かける
- 課題を見つけてもすぐに変えない
- マイナスから±0へ──まず信頼関係を築く
- 社員が育つ環境は「教育の機会」と「ポジション」の2つ
- 「定年まで現場」と言っていた社員が会社の中心に
1分で読める要約
「PMIは100日で終わらない」──買収後の統合(PMI)を、高木代表は最低1年かける「成長のための準備期間」と位置付けています。課題を見つけても、売り手側に約束した「急激には変えない」を守りながら、まず信頼関係を築くことを優先するそうです。
社員が育つ環境として大切にしているのが「教育の機会」と「ポジション」の2つ。動画では、「定年まで現場で終わるだろう」と話していた社員が、今では会社の中心的な存在になったエピソードも語られています。
前編に続き、5社のM&Aを経てグループを成長させてきた高木代表ならではの、買収後のリアルな向き合い方が詰まった内容です。
気になるところから動画で見る
00:00 ダイジェスト
00:29 本編開始
01:05 PMIに力を入れる理由
03:38 現在のPMIの運用
04:56 PMIにかける時間
05:50 PMIのポイント
09:07 成長ステージの動き
10:14 グループの成長の秘訣
12:44 ポジションを掴んだ事例
14:31 M&Aによる成長エピソード
17:26 高木社長のメッセージ
18:36 エンドカード
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文字起こし(音声認識)を読みやすく整形したものです。実際の発言と細部が異なる場合があります。
本編開始
武井:後半戦は、M&A後の取り組みについて伺っていきたいと思います。社長のところはPMIに非常に力を入れていらっしゃると思うのですが、どうして力を入れようと思ったのか、というところから伺いたいです。
PMIに力を入れる理由
高木:これは1社目の教訓が生きているかなと思います。教科書的にこういうことをします、というのはわかっていても、最初の時は正直、PMI(合併後の統合)を軽く見ていた部分がありました。それで相当大変な思いをしたので、2社目以降はさらに精度を高めてやっていこうと思うようになりました。
武井:PMIを今どういう風に位置付けているんですか?
高木:やはり一緒にみんなと成長していきたいという想いがあるので、PMIは成長するための準備期間だと位置付けています。そこではまず私自身のことを知ってもらったり、それから相手のことを知る。会社の中の課題を発掘していって、今後どう解決していこうかを考えます。他のグループ各社間でシステムやルールがバラバラだったりする部分も見つかりますが、そこはすぐには変えません。変えたほうが良いものを見つけて、一緒にしていくための準備期間としてやっています。
武井:PMIというと契約後すぐに成長させようという捉え方をされる方も多いと思うのですが、そうではないんですね。
高木:そうですね。まず信頼関係を築く時間が必要だと思っています。そんなにすぐ「100日プランでやりましょう」というかたちでは変わらないんです。
武井:ちなみに1社目の教訓は、言える範囲でどんな教訓があったんですか?
高木:教科書的に「100日でいこう」と当てはめようとしていたんですが、そうではなくて、社員一人ひとり、それぞれの会社にはこれまでの歴史の中でできてきたルールや文化があります。それを1社目でいろいろと気付いて、これはもっと時間をかけて力を入れてやらないといけないと思いましたね。
現在のPMIの運用
武井:2社目以降から、今はどんな感じでPMIを運用されているんですか?
高木:まずは自分のこと、それからグループのことを知ってもらうことから始めます。売り手の社長は我々のことを知っていますが、幹部もだいたい知らないか前日に知る程度で、従業員は当然知りません。向こうの社員にとっては「こいつは誰だ?」という状態なので、まず自分やグループのことを知ってもらい、それから相手のことを聞く。「私はこういう人間です、怪しくないですよ、教えてください」という感じです。それから会社の問題点についても、ヒアリングをしながら見つけていきます。単価が低いとか、そもそも会社のルールがなかったとか、様々ですね。
PMIにかける時間
武井:そのPMIという準備期間は、時間でいうとどのぐらいを目安にされているんですか?
高木:少なくとも1年は見ています。100日プランの4倍ぐらいですね。今でいうと、フジサービスさんはちょうど1年少しぐらい経ったところで、社員の方々も自主的に行動してくれるようになって、ちょうど良い感じに準備期間を経て成長フェーズに入った感じです。
PMIのポイント
武井:実際にグループインされた企業さんに対して、どういったPMIをされているか、少し細かめに伺ってもいいですか?
高木:まず最初は、売主さんの社員さんから見たら我々のことを全然知らない、マイナスから始まっている状態なので、少なくとも±0の状態に持っていくことをやっています。そのために自己紹介をして、「こいつは怪しくないぞ」と思ってもらう。そこからは個別面談を行ったり、しんどい場合はグループ単位でやったり、仲良くなってきたら飲み会をやったりして、関係作りをしていきます。その中で実際にどういう業務が行われているか、問題がないか、改善できる点はないかをヒアリングしていきます。
武井:そこで良くない点が見つかっても、まだ変えないんですか?
高木:変えないです。会社の環境を急激には変えないという約束を、売り手側の皆さんに説明会などでしているからです。「やっている仕事内容は変わりませんよ」と言うことで、多少は安心してもらえる。なので課題を見つけても、すぐ「じゃあ変えます」とやってしまうと、「あの言葉は嘘だったんですか」となってしまうので、しばらくはそのままにしておきます。
武井:それは我慢が必要そうですね。きつくないですか?
高木:きつい部分はありますが、変えるとしてもゆっくりです。社員が「変えてもいいかな」と思えるタイミングが来るまで、その時の状況、残っている方々との関係値を見ながら判断しています。従業員から「何故変えないんですか」と声が上がったら、「じゃあ変えようか」というように、社員の主体性を待つかたちです。
成長ステージの動き
武井:だいたい1年間ぐらいが準備期間で、そこから成長ステージに入っていくということですが、成長ステージでやることは決まっているんですか?
高木:決まったものは特にないんですが、考えているのは、グループ間での交流を増やして売上の向上につなげたり、共通化できるところは共通化してコスト削減できるのであれば、という考えは強く出てきます。1年間ぐらいのPMIで安心と関係値を作って、そこから変えられるところを変えていく、という流れですね。
グループの成長の秘訣
武井:グループに入られた各社の皆さんがしっかり成長されていると思うんですが、例えばオーシャン・コンサルティングさんは営業利益増加率800%超とのことで、その秘訣というか、やれているポイントはあるんですか?
高木:正直、秘訣かどうかはわからないんですが、1つ考えているのは、できる限り社員が自分たちで成長できるような環境を提供していきたいということです。大きく2つあって、1つは教育の機会。成長するためには勉強ができる環境が必要なので、そういうものを積極的に提供しています。もう1つはいろいろなポジションです。おかげさまでグループが成長していて、様々なポジションが生まれているので、そういう機会を提供したりしています。中には高額な資格取得も、会社負担で提供しています。ある売主さんの社長に「社員がおかげさまで、今までは中々できなかったんですけれど、できました。ありがとうございます」と言われて、驚いたのを覚えていますね。
ポジションを掴んだ事例
武井:実際に、こういうポジションがあるよ、と高木社長からオファーを出すこともあるんですか?
高木:社員が「こういうことをやりたいです」と言っているのを聞いたり、人を経由して聞くことが多いんです。それを覚えていて、「こういうことをやったほうがいいのでは」と投げかける。やるかやらないかは本人次第です。
武井:過去に具体的な例はあるんですか?
高木:例えばエンジニアだった人が労務の責任者になった例があります。元々その社員は会社の役に立ちたいという想いがあって、社労士の勉強をしているという話を聞いていたんです。グループが成長していくとバックオフィスの業務もたくさん膨らんでいくので、「じゃあこういうのをやってみないか」と言ったら「やります」と挑戦してもらいました。今の規模のままだったら生まれないポジションが、グループが成長することで生まれてくるということですね。
M&Aによる成長エピソード
武井:M&Aを5社されてきた中で、本当に上手く成長されたなというエピソードがあれば伺いたいです。
高木:フジサービスの例を挙げます。いろいろな社員に個別でヒアリングしていた時、たぶん売主さんの中では次の後継者に見ていたんだろうなという方がいたんですが、その人に話を聞いた時は「私はこのまま定年まで現場で仕事を終えるだろう」と言っていたんです。それが今ちょうど1年ぐらい経って、フジサービスの事業承継を経て、社員を自ら引っ張るかたちで会社の推進力になっています。
武井:何があって、そんなに変わったんですか?
高木:資格取得もそうですし、YouTubeを観て感じたところもあったと思います。この方は今、SDアドバイザーズチャンネルのYouTube制作担当なんです。動画制作を非常に頑張っている社員がいるとある時聞いて、我々も今後は動画制作を積極的に世に出していこうということでお願いしたら、現在はすごく活躍しています。1年前は「現場のいち作業者として終わるんだ」と言っていた人が、今は会社の中心となっている。その姿を見ているのは、私の中でもすごく大きかったと思います。私からは「これをやれ」「あれをやれ」と言ってきたつもりは全くなくて、あくまで「こういうのがあるけどどうする?」という提案をしてきた中で、ご本人が資格を取ったり手を挙げてきて、今は頭角を現しています。
高木社長のメッセージ
武井:最後に、視聴者の方々にM&AやPMIを経験されてきての一言をいただいてもいいですか?
高木:前編で「M&Aは怖いですか」というお話がありましたが、確かにM&Aは怖いと思われている経営者の方は絶対にたくさんいます。実際に怖いです。でも実際にやってみて、売主さんの企業の社員の人たちが変わっていく姿を見るのは、すごく楽しいですよ。言葉だけでは伝わり切らないかもしれませんが、お金に代えがたいものがあります。これはやった人にしかわからない世界観ですね。少し怖い部分もあるかもしれませんが、ぜひM&Aをやってみたいという方は、一歩を踏み出していただくと、今までとは違った景色が見えると思います。ぜひチャレンジしてみていただけたらと思います。
武井:本日は貴重なお話をありがとうございました。私も改めて非常に勉強になりました。
前編はこちら

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