【M&Aで会社を伸ばす】8社買収の社長に学ぶ“見極めから資金調達まで”の実践【カーレントサービス/保坂高広代表/後編】
動画でわかること
- 買う会社の見極めは、まずB/S/投資回収は「5年」が基準
- シナジーは売上より先に"落とせるコスト"で判断
- 「買った・買われた」にしない、風土を壊さないPMI
- 社員との対話と"会社化"で組織を束ねる
- 資金調達は社長自ら──スキーム・提案・情熱で銀行を動かす
1分で読める要約
買う会社の見極めは、まずB/S(純資産)を見て債務超過でないかを確認し、投資回収は5年前後を目安に——株式会社カーレントサービスの保坂高広代表は、M&Aの投資基準をそう語ります。シナジーは売上の伸びより先に"落とせるコスト"で判断するのがポイントだといいます。
買収後のPMIで大切にしているのは、社員との対話。改善提案を目安箱で吸い上げて実際に応え、既存の風習や習慣を壊さないよう、買収した会社の中から幹部を引き上げる方針を貫いています。「買った・買われた」という上下関係を作らないためのメッセージ発信も欠かしません。
動画では、資金調達で銀行を動かすための"スキーム・提案・情熱"の重要性や、7年かけて業績を立て直した経験がM&A後の再生に生きているというエピソードも語られています。
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00:00 ダイジェスト
00:32 本編開始
01:03 保坂社長の投資基準
03:21 戦略の変換のポイント
05:12 PMIでの心がけ
10:17 M&A時の資金繰り
13:58 今後のビジョン
15:29 エンディング
15:43 エンドカード
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文字起こし(音声認識)を読みやすく整形したものです。実際の発言と細部が異なる場合があります。
本編開始
畦田:ここまで御社のこれまでの経緯やM&Aについて深く聞いてきましたが、後編ではカーレントサービス保坂社長に、具体的にM&Aを進める中での成功ポイントなど、少し生々しい話もお伺いできたらと思います。先ほどお話もありましたが、いろんな案件が来る中で、保坂社長の投資基準、こういうところをよく見ているとか、投資回収はこれくらいで見ているとか、その辺りお伺いしてもいいですか?
保坂社長の投資基準
保坂:絶対にダメなのは債務超過ですね。基本は5年前後で見ていて、まずは債務超過じゃないかというところ。純資産はやっぱり見ます。BSを見て全然ダメだったらもうPLは見ません。現金と借入金と減価償却、当期純利益がどんな利益かというところを見ています。組むことでどれぐらいシナジーが出そうか、利益がどれぐらい出そうかというのも見ますね。それがフェーズ1で、フェーズ2はシナジーで、売上がどれぐらい上がるかというより、どれぐらいコストが落ちるのかなというところを見ます。最初はそこで、その後売上がどれぐらい上げられるかなというところ。うちはあんまりEBITDAでは見なくて、営業利益で見て投資回収も営業利益で見ますね。結果、営業利益はどれぐらいになったのかな、というのを見ます。
畦田:コストをどれだけ下げられるか、具体的にはどういうところを見るんですか?
保坂:バッと見て本当に全部ですね。役員報酬も含めて、通信費、販売管理費、そこも含めて。中小企業さんだと交際費がすごく多かったりして「もうちょっとこれ下げられるな」ということもあります。5年ぐらい、実際そこがどうなるかというのはやってみないと分からない世界もあります。5年で回収できるかなと思って回収できないパターンの方が多いかもしれません。何だかんだコストがかかってきて6年7年かかったりということも想定しています。そもそもそこまで回収期間というのは意識していないかもしれません。足りないものを補えるかとか、その時その時戦略が違うので、その戦略に合うか、逆にM&Aによって戦略を作れるかということも意識していますね。
畦田:戦略の見直しがすごく上手いのかなと勝手に思っているのですが、その辺どういう風に定期的に見直しされるんですか?
戦略の変換のポイント
保坂:3ヶ月後に見直すとか半年後に見直すとかはやっていなくて、その時その時ですね。会社の状況、人の入れ替わり、BS・PLの状況もそうですし、外部環境の変化もそうですし、その時その時なんですよね。
畦田:それも社長ご自身で考えられるんですか?
保坂:相談はしますけど、大掛かりな変化というよりはちょっとずつ変えていくみたいな感じです。歴史のある業界なので、そこをちょっとずつ変えられるか変えられないかというのが意外と大事だと思います。これも多分経験だと思うんですよね。会社にいた時になかなか仕事がなかった時期があって、ビジネスモデルの転換がどうしても必要な時期があって、そこから変えていって軌道に乗るまでに7年ぐらいかかったんじゃないかな。ものすごい数千万円の赤字も出していました。そんな時にしっかりどう黒字化していくかということばかりやっていたので、状況が変わる中でも黒字ということをずっと追っていて、トライアンドエラーを繰り返してやってきたので結構苦しんだんですよね。その苦しんだ時期に本当いろいろやったので、その経験が生きています。今も苦しくなる時ってどうしてもありますよね、特にM&Aの後のPMIってなかなか難しいと思うんですけど、その時その会社の状況、苦しい時にどう戻していくか、挽回していくか、再生していくかという経験は、自分が29歳で社長についてそこから35〜36歳ぐらいまで大変だった経験が生きているのかなと思います。
畦田:それはめちゃくちゃ生きてそうですね。PMIで心がけていることとかあったりされますか?
PMIでの心がけ
保坂:PMIで心がけていることは、社員の人との対話ぐらいですね。
畦田:相手先の社員さんと結構コミュニケーションを取られるんですか?
保坂:結構取っていますね。買収後最初は濃く取ることが多いかな。その後は幹部の人とはよく話しますね。雑談ではなく、今の会社の状況とこうなっているからこうしたいんだという話をして、それに乗ってくるかどうかを見たりしています。社員とのコミュニケーションは、幹部とはそういう会議をしますし、現場のメンバーとも飲み会や忘年会とか、拠点も増えているのでなかなか大変ですけど、そこは機会を作るようにしています。全員と100%コミュニケーションできるかというとなかなかできないので、改善箱という目安箱を置いています。そこに改善提案で名前が書いてあったら、その拠点に行った時に面談して、例えばモップが足りないとか、ユニフォームがバラバラだった(前の社長が買ってくれず自分で写メを送って買っていたのでバラバラだった)とか、スタッドレスタイヤを履かせてくれないとか、有給の取得が認められなかったとか、そういうところをしっかり解釈化していくということは心がけています。オーナー社長が全部指示命令しているような会社だとルールがない、俺が規則だみたいなこともあるので、カーレントサービスグループの制度を入れていって、標準化していくということもやっています。総務・人事・経理は全部東京で一括、管理会社が全グループを見ていく体制でやっているので、なるべくバラバラにしない、全部標準化するということを心がけています。
畦田:改善箱に来た意見にちゃんと答える、レスポンスするというのは大事だと思っていて、私たちがコンサルで従業員意識のアンケートを取っても、それで終わって何も改善されないと社員は期待して答えられなくなってしまうので、社長自らフィードバックしていくというのは素晴らしいですね。他にPMIで注意されていることはありますか?基本的に社長交代するのか、ご引退される方もいらっしゃると思うんですが。
保坂:グループによりますが、うちは全部交代していますね。ただ、前の社長が残れているのは2人だけです。社長はどうされるんですかというと、全部私です。実際は現場全部には行けないので、そこの幹部を中心に置いていくみたいな形です。よく本体から買収した会社に人を送るというのが定石だとは思うんですが、うちはそれをやっていなくて、元々ある会社の誰かを引き上げて上にしていくということをやっています。その会社の伝統や風習、習慣を壊さないように。逆に「何も変わらないじゃん」と思われることも多いですけどね。実際、うちの相模原の拠点は元々軽運送で、所長は軽運送のドライバーです。今カーレントサービスグループの中で人数、拠点として1番か2番目に大きい拠点を、元ドライバーが所長でやっています。それはやっぱりその中から引き上げられそうだなと社長が思って誰を抜擢するかというところなんですよね。現場としても、上から降ってきて自分たちは上に上がれないんじゃないかではなく、自分たちが頑張れば上を目指せるというのはすごくモチベーションになると思います。あとは、買った会社・買われた会社みたいにはならないようにしていて、並列だよということをよく言っています。そのメッセージを発信するというところと、あとはM&Aする時の資金調達のところもお伺いしたいのですが、それなりの金額が動きますし、連続的に買収していくとなると、自己資金だけでなく借入もしながらやっていくと思うのですが、その辺意識されていること、銀行との付き合い方はどういうことをされていますか?
M&A時の資金繰り
保坂:基本的にはデットファイナンスですね。あとは売り手(バイアウトされる側)の社長への退職金をどれぐらい出せるかなというところ。退職金を出した方が税金対策にもなるので、そこから始めて、自己資金をどれぐらい出せるかを考えた上でどれぐらいファイナンスするかというところです。銀行との付き合い方は、常にうちの戦略とビジョンを話しています。例えば今関東圏だと2t、4t、10t、トレーラーまでトラックが揃って倉庫も5000坪あって、そこからロジスティクスの機能はもう足りているので、次はコンストラクション、ロジストラクションを構築するための領域を強くしていきたいという話を常にしているので、これから行う関東圏でのM&Aは主に重量屋さんのような会社がターゲットになってくると、そういう話を銀行にもしているので、そういう話があった時に「今足りないからやるんですよね」となると進めやすいと思います。メインバンクは3行ぐらいで、聞くのは売却予定の会社のメインバンクではなく、基本的には自分たちの銀行から進めます。金利はあまりごちゃごちゃ言わないようにしていて、自己資金もそんなに言われないですね。多分今までの実績があるからだと思います。逆に大体これぐらいしか出してくれないだろうなというのは分かっているので、絶対出してくれないだろうなという案件は相談しません。過去の大型案件では50ページぐらいのパワーポイントを社長自らが作って、金融機関向けのシナジーとか買った後の財務計画、こけた場合でもこれがあるから大丈夫なんだという話、あとはスキーム。LBO(レバレッジド・バイアウト)というスキームも活用していて、SPCで会社を作ったりというスキームの組み合わせと、自分の提案、スキームと提案と情熱、絶対欲しいんだというビジョンをしっかり語っていく、この3つがM&Aには大事なんじゃないかと思いますね。
畦田:最後にお伺いしたいのが、御社が今後どういうビジョンを描いていくのかというところをお伺いして、今日は終わりにしたいと思うのですが、いかがですか?
今後のビジョン
保坂:今後のビジョンは、ロジストラクションという我々のビジネスモデルであり、ソリューションを日本全国で展開していけるような会社を作っていくということです。ATMや券売機くらいのものだけをやるのかというとそうではなくて、自分がボクシングをしていたというのもあるんですが、扱う製品の重量の階級をどんどん上げていく、どんどん重たいものにチャレンジしていく。ロジスティクスではなくコンストラクションの方に携わる作業をする方はやっぱり職人なんですよね。技術をどんどん高めていきたいというモチベーションを非常に持っている方が多いので、もっと重いものをやりたい、もっと重いものをやりたいというふうに、選手がもっと上の階級にチャレンジしていくようなもので、その夢を一緒に叶えていってあげたいというのもあります。今やっている軽量級のものから中量級、重量級、プラント級のものへ、ロジストラクションを日本全国で展開していった後に、海外に出ていくという目標でやっています。
畦田:今日は保坂社長からM&Aというテーマでお話をお伺いしてきましたが、やっぱりお伺いして感じたのは、戦略がしっかりされていて、自分たちに足りないピースは何なんだと、そのために何が必要かで、その1つの選択肢がM&A。投資基準もしっかりされていますし、それをするために銀行さんを巻き込んでいく力だったり、資金を考えられたり、情熱があるなというところで、皆さんの参考になる話も多かったんじゃないかなと思っております。今日は保坂社長、お話をお伺いさせていただきありがとうございました。
保坂:ありがとうございました。
エンディング
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