人口縮小社会で、中小企業はどう在るべきか|皆さんと一緒に考え続けたい問い

「人口縮小社会で、中小企業はどう在るべきか」

こんにちは。白潟総合研究所の石川です。

冒頭の問いを、白潟総研の承継が決まった前後から、ずっと考え続けてきました。私たちのお客様である中小企業が向き合わざるをえない問いであると同時に、私自身が承継にあたって正面からぶつかった問いでもあったからです。

研究・実験を自社でずっと試してきましたがこの問いに対する完全な答えは、まだ持っていません。(当然ですが)「白潟総研だけでは、解き明かせる問いではない」と痛感しています。

だからこそ、現時点で考えていることを書いてみようと思います。そして、読んでくださっている中小企業の社長・幹部のみなさんと、一緒に考えていきたいと思っています。ぜひ、ご自身の会社を思い浮かべながら読み進めてみてください。

1. なぜ、この問いは中小企業にとって避けられないのか

我々が逃れられない、大きな社会的トレンドがあります。それが、人口縮小です。

日本の労働人口は、10年ごとに約600万人ずつ減っていきます。これは景気の波でも、政策の巧拙でもなく、すでに生まれてしまった人口構造がもたらす、ほぼ確定した未来です。

出典:総務省「人口推計」

これは日本だけの話ではありません。ドイツ、中国、韓国も2020年代前半に人口のピークを迎え、22世紀にはほとんどの国が人口縮小に入っていきます。21世紀は、人類がはじめて経験する「人口が縮小し続ける100年間」になります。

人口縮小社会では、必然的に経済成長は停滞・縮小していきます。そして経済成長を前提とした経営も成立しなくなります。人材確保は難しくなり、お客様の数も減り、放っておけば地域さえ維持できなくなります。わたしたちは、そういう大きな転換点に立っています。

2. 未来を分ける、2つのシナリオ

と、ここまで少し重い話が続きました。ただ、悲観的になりすぎる必要はありません。

面白い話があります。経営学者の楠木建氏によれば「戦後最大の危機」「100年に一度の危機」と言われた出来事は、戦後から今日まで、なんと23回もあったそうです(笑)

オイルショックもバブル崩壊もリーマンショックもパンデミックも、そのたびに「もう終わりだ」と言われ、そのたびに乗り越えてきました。人間は、変化に適応する生き物です。今回の人口縮小もまた、乗り越えられない壁ではなく、なんだかんだ人類は適応するのだろうと思います。

では、適応した先に、どんな未来がありうるのでしょうか。

京都大学の広井良典教授と日立製作所(日立京大ラボ)が2017年に公表した、AIによる未来シミュレーションの研究が適応した先の未来を予想するのにとっても参考になりました。約150の社会要因をモデル化し、2050年に向けて約2万通りの未来を計算した結果がまとまっています。
出典:京都大学・日立製作所「AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言」2017年9月5日 https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2017/09/0905.html/参考:広井良典『人口減少社会のデザイン』

その研究によれば、日本の未来を分ける最も本質的な分岐は、「都市集中型」か「地方分散型」だと言います。私はこれを「一極集中」と「多極分散」と言い換えて考えています。


一極集中は、都市に人も富も集まり、少数の勝者にすべてが吸い寄せられていく未来。多極分散は、各地域にそれぞれの豊かさと正解が分散して存在する未来です。

そして研究は、望ましいのは多極分散のほうだ、とはっきり指摘します。一極集中では、出生率が下がり、格差が広がり、健康や幸福感が低下していく。多極分散では、出生率が持ち直し、格差が縮まり、健康や幸福感が高まっていく。効率だけを見れば一極集中に分がありそうですが、その効率と引き換えに、社会は多様性を失い、変化に弱く脆くなっていくのです。しかも、後戻りできない分岐点は、2025年から2027年ごろに訪れる。つまり、まさに今このタイミングです。

3. 私が描きたい、多極分散の未来

中小企業に引き付けて考えると、なおさら私は「多極分散」の未来を支持します。

企業の「一極集中」は中小企業にとって、とても不幸な未来だと。一部の強い会社にすべてが集約され、その他の無数の会社が静かに消えていく。効率だけを見れば「正しい」のかもしれません。でも、私はその未来を心から嫌だと思っています。

理由は、とっても個人的かつ感情的なものです。私が心の底から価値があると信じている中小企業たちが消えていくことに納得がいかないからです。多様な中小企業が存在することが、同時に社会の豊かさだと信じているからです。

社長一人ひとりの人生と”らしさ”が滲み出た、この世にたった一つしかない会社。同じ会社なんて、どこにも存在していません。そんな”らしさ”あふれる会社は、そこで働く誰かにとって、あるいはその会社を必要としているお客様にとって、かけがえがないものであるはずです。そんな価値ある会社が消えてしまう日本の未来は、とても文化的に貧しい社会ではないかと思うのです。

私が描きたいのは、その反対です。多様で、豊かで、それぞれに強い中小企業が、あちこちに存在する未来。いくつかの大企業だけが生き残るのではなく、たくさんの中小企業が地域ごとに分散している。それが、白潟総研の描きたい未来です。

4. 私がこの問いを考えはじめたきっかけ

ここで少し、個人的な話をさせてください。

私がこの問いに本当の意味で自分事として向き合わざるを得なくなったのは、白潟総研を承継する前後からでした。それまでの私は、正直なところ「自分は何のために経営をするのか」を、腹の底から問うたことがありませんでした。

先代の白潟や、お会いしてきた尊敬する社長のみなさんと接するなかで「社長になるというのは並大抵のことではない」とずっと感じてきました。それでも社長を引き受けるのであれば、「自分は何のために経営をするのか」「この時代にどのような経営を目指すのか」を腹落ちさせておかないと、とても走り続けられない。そう思ったのです。

実際に承継の直後、私は3ヶ月ほど、あえて先代の白潟に会わないと決め、朝も夜も休日も、自分の中から出てくる言葉をただ紙に書き続けました。誰かの答えではなく、自分の軸を、自分一人で見つけるためです。

※詳細は「白潟総研 承継ストーリー(石川サイド)」に書いたので、よければのぞいてみてください。https://www.ssoken.co.jp/archives/method/ssoken-management/992

そしてもう一つ、痛感したことがあります。

これからの時代、単純な成長・拡大のビジョンだけでは社員はついてきてくれないということです。

私がコンサルタントとしてキャリアをスタートしたころは、今と比べると、会社が伸び、給料が上がり、成長していく・・・という、ある種みんなが同じゴールを夢見られたように感じます。成長に対する社会全体の信仰は、若手世代にもまだ根強く残っていたと思います。

でも、いまの世代はあきらかに違います。

現代は人口縮小社会であると同時に、物質的にはかつてなく満たされた時代です。市場の伸びは停滞し、働く人の価値観も驚くほど多様です。「成長を目指してみんなで頑張ろう!」では若手世代の想いを集めることが難しくなりました。生きるための成長しなければならないという動機が薄れた分、「何のために働くのか」という問いに対し各人が別々の答えを求めています。

だからこそ、成長だけのビジョンでは人は動きません。自分たちがどんな時代に生きていて、この会社はどう在るべきなのか。その文脈、コンテクストを、社長自身が編んで、自社だけの答えを語れるかどうか。

私はこれが、これからの経営者にとって最も重要な仕事の一つになっていくと考えています。

5. どうあるべきか、一つ目の仮説(スモールジャイアン”ツ”仮説)

では人口縮小社会で、中小企業はどう在るべきか。白潟総研なりの現段階の”一つ目の答え”が、「スモールジャイアン”ツ”仮説」です。

ここ数年間、この仮説に基づいて自社実験を行い以下の結果を得られました。

① 利益率の11%⇒21%
② 離職率が50%→2%にダウン
③ 3年間の売上成長率183%

スモールジャイアンツになるためには、4つのクリアすべき鍵があります。


詳細は別の機会でご説明できればと思いますが、それぞれの鍵の簡単な説明を載せておきます。

鍵1:稀少な会社化
みんなに好かれるのではなく、たった一人に強烈に愛される。そんな社長の”らしさ”を色濃く出した会社になることによって、求職者・社員から選ばれ続ける会社を目指します。”らしさ”に基づいて、4章で触れた「今の時代において自社が目指すこと」を考え発信し、それに共感してくれる社員を集めることで、採用・定着の悩みを解消します。

鍵2:高付加価値・高利益・高賃金化
市場が縮小し続ける社会では、薄利多売では立ちゆきません。高利益を出しながら、高賃金を出せる会社を目指します。

鍵3:幹部・経営者育成の再現性
カリスマ一人に頼らず、経営を担える人材を、仕組みで繰り返し育てます。

鍵4:オープンイノベーション、小さく強い「群れ」
自前主義をやめ、提携やM&Aで、単独では出せない価値・強みを外部と掛け算します。まさにスモールジャイアントではなく、他とネットワークを気づきながらスモールジャイアン”ツ”を目指します。

6. 正解は一つではない

ただし、これは一つ目の仮説にすぎません。正解は複数あるのだと思っています。

実際、この仮説を複数のお客様にお話しするなかで「AIというもう一つの大きなトレンドの視点が抜けているよ」「他にも勝ち筋はあるはずだよ」といった声を、すでにいただいちゃっています(笑)まったくその通りだと思います。

だからぜひ、中小企業の社長・幹部の皆様にご協力いただきたいです。

白潟総研は「人口縮小社会での、中小企業経営の在り方を見つける会社」になりたいと思っています。「中小ベンチャー社長を元気にする」という、私たちが掲げてきた存在意義。それを実現するためにも、この時代における中小企業の在り方を、探し続けます。

ただ白潟総研一社だけでは、その正解は到底解き明かせません。ぜひ皆さん現場の実感、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、そして「石川、それは違うぞ」という反論も含めて、一緒にこの問いを探求していきたいと思っています。

7. 最後に

その考える場として「これからの中小企業 探究会」を始めました。

第1回は先日、山口周さんの『ビジネスの未来』を手がかりに開催しました。経営者同士でお酒を飲みながら、超長期の目線で語り合う夜です。

そして、第2回を11月30日に開催します。テーマは社員の幸福を追いかけることで成果をうむ在り方。『幸福学×経営学:幸せな従業員がパフォーマンスを高める』を予定しております。

誰かが正解を教える会ではありません。まだ誰にも分からないことを、経営者・幹部同士で一緒に考える会です。もし少しでも関心をもっていただけたら、皆さんの貴重な視点をご提供いただけたら嬉しいです。

一緒に中小企業の在り方を、探しにいきましょう!

▼11月30日開催 これからの中小企業探究会 申し込みフォーム
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白潟総合研究所 石川哲也