堺 彩華の物語

世界は誰かの仕事でできている。

2014年、12歳の頃、テレビでジョージアのCMを見て衝撃を受けました。

どれくらい衝撃を受けたかというと、自動販売機でそのコピーを見つける度に立ち止まってしまうくらい。

私の父はペンキ屋、塗装職人です。

口を開けば「仕事を休みたい」と言いながらも、朝4時や5時には起きて現場に向かう人。

このコピーを見て、父もどこかの誰かのためになっているんだと感じて、幼いながら衝撃を受けたんだと思います。

本当に、世界は誰かの仕事でできている。

現場で働く父の姿は見たことがなかったけれど、誇らしかったんだと思います。

そして、家に帰れば私と弟をいつでも笑わせてくれる父は本当にすごくて、大好きです。

それと同時に、こころから嫌いで許せないところがあります。

専業主婦の母のことを尊重・尊敬していないこと。

あるとき父は言いました。

「俺が外で働いとんねんから、家のことやっとったらええねん」

まるで、母は何もせず暇をしているように言う。

子育てと家事をしながら、個人事業主である父の経費精算や年末調整、職人さんへの支払いをはじめとする経理業務を行っていました。

寝て、起きて、仕事に行けるのは、おひさまの匂いに包まれた布団を用意したり、汗やペンキで汚れたごとぎ(仕事着)を洗ってくれているから。

仕事をするにも、快適にする仕事をしてくれる人がいてのこと。

それを理解せず、当たり前に享受し、敬意もなければ感謝の言葉もない。

近くで見ていたからこそ、許せなかった。

そして、疲弊していく母を見るのがつらかった。

世界は誰かの仕事でできている。

誰かが誰かのためにつとめているのに、それが認められないことが悔しかった。

父も母のことも好きなのに、尊重されていないという事実が苦しくて、純粋な気持ちを持てなかった。

何とかして母を尊重・尊敬してほしいと父に伝えたかったけれど、当時小学生の私は感じているものが尊重・尊敬だとわかっていない。伝えられませんでした。

「その分、私がやる」

漠然とみんな幸せでいてほしい、それなら自分が幸せにしようと、幼いながら覚悟を決めたように思います。

大学生になり、白潟総研のインターンを始めたときのこと。

ある会社の打ち合わせに同席し、会食にまで連れて行ってもらいました。

当時の私はまだ社長という生き物をよくわかっていなくて、「偉そうな人なんだろうな」「また学生扱いされるんだろうな」そう思っていました。

いざ、お話ししてみると、ビジネスの話に全く関係のない私に興味を持ってくれて、話を聞いてくれて、意見の尊重までしてくれる。

「学生」ではなく「一人の人間」として接してくださったことがとても嬉しかった。

私もこの社長のようにどんな立場のどんな人とも、一人の人間として対峙したい。

そして、その社長とのご縁を切りたくない。

そんな一心で私はコンサルタントになりました。

コンサルタントは経営者や社員、それぞれの想いを尊重し、尊敬したうえで、一番良い方法を一緒に見つけていく仕事。

いろんな人と関わる仕事です。

人の数だけ想いはあるし、感情だってある。

だからこそ私は、肩書きや立場にとらわれず、一人の人間として向き合って、隠れた強みや想いを引き出して、納得した上で進められる力になりたい。

世界は誰かの仕事でできている。

だからこそ、一人ひとりが尊重し合える。

そんな力になれるコンサルタントでありたいと思っています。