白潟総研は、青山学院大学の教授と「非認知能力」に関する共同研究を始めました。

中小企業の経営者の方とお話をしていると、
「トップセールスをマネージャーに昇格させたら、突然うまくいかなくなった」
「幹部が伸び悩んでいるのに、“責任感が弱い”など曖昧な言葉でしか説明できず、育成が進まない」
という声をとても多く耳にします。

しかし本当に、責任感や性格の問題だけで片付くのでしょうか?

この“言語化しづらい課題”の背景には、 非認知能力の偏りや不足があるのではないか。

白潟総研はそんな仮説をもとに、青山学院大学地球社会共生学部の林拓也教授と非認知能力に関する共同研究をスタートしました。

今回は「研究を始めました」というお知らせですが、
経営者の皆さまにとって非常に身近な課題に切り込むテーマになっています。

目次

非認知能力とは? なぜいま重要なのか?

非認知能力とは、学力やIQのように数値で測れる“認知能力”とは対になる概念で、
やり抜く力・感情コントロール・協調性・メタ認知・レジリエンス・自己肯定感
といった“あらゆる行動や判断の土台になる力”の総称です。

これらは仕事の成果や人間関係に直結しているにもかかわらず、
一般的には「主体性」「責任感」「コミュニケーション力」など
抽象的で解釈の幅がある不安定な言葉でしか語られないことが多い領域です。

そのため、
「何が原因で失敗したのか」
「何をどこを鍛えれば成長するのか」
といった見立てが曖昧になりがちでした。

しかし、人材育成・教育・心理学の領域では、
近年この“見えづらい力”こそが組織の成果に大きく影響すると明らかになってきています。

白潟総研では、現在は主に子供の心理教育に用いられるこの概念を社会人に対しての人材育成・マネジメントのノウハウとすべく研究を始めました。

非認知能力で何が見えるようになるのか?

今回扱うテーマは、経営者の皆さまが日々感じている“あるある”に直結します。
 

● Case01. トップセールスがマネージャーになると失速する


「自分基準が強すぎる」
「成果が出ない部下への忍耐が弱い」
「目標達成への焦りで視野が狭くなる」

これらを単なる性格や経験不足と断ずるのは簡単ですが、それだけでマネジメント力はなかなか向上しません。

それを自己効力感・他者理解力・感情コントロール・メタ認知などの非認知能力の領域の“偏り”として説明すると、それぞれについて論理的で具体的な解決が見えてくる可能性があります。

つまり、「セールスと比べて何が弱いからマネジメントにつまずくのか」が明確に説明できるようになります。
 

Case02. “そこそこ優秀”で止まる経営幹部


「意思決定が遅い」
「現状に満足して新しいことに挑戦しない」
「自部門のことばかりで全社目線がない」

このような”経営力”と言われる能力も、明らかにテストや偏差値で表せるような認知能力ではありません。

不安耐性/メタ認知/認知的柔軟性/レジリエンスなどといった非認知能力の因子の組み合わせで解析すると、各社の状況によって必要とされている”経営力”が見えてきます。

抽象語で語られてきた育成課題を、因子レベルで「再定義」する

上記の2つのシーンに限らず、これまでは「コミュニケーション力」「主体性」「責任感」といった便利な言葉が多用されてきました。

しかし、こうした抽象語は指導する側にも指導される側にも、
「わかったようで実は何もわかっていない」状態を生みやすく、育成を停滞させる大きな要因になっています。

非認知能力の研究は、こうした曖昧な概念を 具体的な心理因子に分解し、構造として再定義する ことで “どこが弱く、何を伸ばせばよいのか”を明確にする試みです。

今回の共同研究はまだ始まったばかりですが、扱う予定の領域の一部をご紹介します。
 

責任感(Responsibility)


責任感は、次の3つの心理プロセスが連続したときに発揮される力です。

  • 1. 状況を把握する(メタ認知)
     今何が求められているのか、自分がどんな役割を担うべきかを客観的に理解する。
  • 2. 役割を引き受ける意思を持つ(自律性)
     外からの強制ではなく、「自分がやる」と決断する。
  • 3. やるべきことを最後までやり切る(自己統制)
     迷いや怠惰を抑え、行動を継続し結果につなげる。

このように、責任感は「状況理解 → 意思決定 → 行動維持」という一連の能力群で説明でき、精神論ではなく“構造として育てられる力”になります。

さいごに

地頭やセンスと呼ばれてきた非認知能力は、性格や根性論ではありません。
正しく理解すれば、伸ばせる能力です。

今回の共同研究では、幹部育成・採用時の見極め・マネジメント改善などの領域で活用できる理論モデル・診断ツール・研修プログラムの開発を進める予定です。

白潟総研は、中小ベンチャー企業の社長のためのコンサルファームです。
コンサルティング商品はもちろんのこと、このような外部の機関・組織と連携したノウハウの研究開発にも注力していきます。

大小に関わらず面白い発見が得られ次第、このブログでお知らせしてまいります。